トランプ氏のクレカ金利要請/パウエル議長への捜査(2026/1)

はじめに

現地時間2026年1月10日(土)にトランプ大統領がSNS上でクレジットカードの金利上限を1年間10%にすることを呼びかけた。

また現地時間2026年1月11日(日)に米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が大陪審の召喚状を司法省から受け取ったと明らかにした。

以下、それぞれの内容を確認するとともに、それらを受けて1月12日(月)の米国市場がどう反応したかについて整理しておく。


2026年1月10日のトランプ大統領SNS投稿

以下はTruth Social(SNS)におけるトランプ大統領の投稿より引用・抜粋

  • Please be informed that we will no longer let the American Public be “ripped off” by Credit Card Companies that are charging Interest Rates of 20 to 30%, and even more, which festered unimpeded during the Sleepy Joe Biden Administration.
    眠いジョー・バイデン政権下で容赦なく蔓延した、20~30%、あるいはそれ以上の金利を課すクレジットカード会社にアメリカ国民が「騙される」ことはもう許さない
  • AFFORDABILITY! Effective January 20, 2026, I, as President of the United States, am calling for a one year cap on Credit Card Interest Rates of 10%.
    手頃な価格!2026年1月20日より、私はアメリカ合衆国大統領として、クレジットカード金利の上限を1年間10%にすることを呼びかける

2026年1月12日(月)米国市場開場前までの関連する動き

  • 1月11日(土)、業界団体の共同声明
    • 私たちは、アメリカ国民がより手頃なローンを利用できるように支援するという大統領の目標を共有している
    • 同時に10%の金利上限はローンの利用可能性を低下させ、クレジットカードに依存し大切にしている何百万ものアメリカの家庭や中小企業経営者、まさにこの提案が支援しようとしている消費者に壊滅的な打撃を与えることが証拠から明らかになっている
  • 1月11日(日)、トランプ大統領はエアフォースワンで記者団の質問に対し、1月20日までに企業がこの上限設定に従わなければ「法律違反」となると警告
  • 1月12日(月)、ウェルズ・ファーゴのアナリストMike Mayo氏の顧客宛てメモ
    • 手数料に1年間10%の上限を設けることで、大手銀行の税引き前利益は推定5~18%減少し、キャピタル・ワンやシンクロニー・ファイナンシャルなどクレジットカードや関連サービスに特化した金融機関の利益は「完全に消え去る」ことになる
    • この案はカード経済を破綻させ(現在のカード収入の大部分を失わせ)、融資を停止させる動機となるだろう

2026年1月11日のFRBパウエル議長声明

以下はFRBのWebサイトより引用・抜粋。

  • 金曜日、司法省は連邦準備制度理事会に対し大陪審召喚状を送付し、昨年6月に上院銀行委員会で私が行った証言に関連して刑事訴追の可能性を示唆しました
  • この証言は、連邦準備制度理事会の歴史的なオフィスビルを改修するという複数年にわたるプロジェクトに一部関連していました
  • 私は、法の支配と民主主義における説明責任を深く尊重しています。FRB議長を含め、誰も法を超越することはできません
  • しかしこの前例のない行動は、政権による脅迫と継続的な圧力という、より広い文脈の中で捉えられるべきです
  • この新たな脅迫は、昨年6月の私の証言やFRBの建物の改修に関するものではありません。議会の監督役割に関するものでもありません。FRBは、証言やその他の情報開示を通じて、改修プロジェクトについて議会に情報を提供し続けるためにあらゆる努力を払ってきました。これらは口実に過ぎません。刑事訴追の脅迫は、FRBが大統領の意向に従うのではなく、国民にとって何が最善であるかという最善の評価に基づいて金利を設定していることの結果なのです
  • これは、FRBが証拠と経済状況に基づいて金利を設定し続けることができるかどうか、あるいは金融政策が政治的圧力や脅迫によって方向付けられるかどうかに関する問題です
  • 私は、共和党政権、民主党政権を問わず、4つの政権下でFRBで働いてきました。いずれの政権においても、政治的な懸念や偏りなく、物価安定と最大雇用という使命にのみ専念し、職務を遂行してきました。公務には、時に脅威に直面しても毅然とした態度を貫くことが求められます。上院が承認した職務を、誠実に、そしてアメリカ国民に奉仕するという強い意志を持って、今後も遂行していきます

2026年1月12日(月)米国市場開場前までの関連する動き

  • パウエル議長の声明発表前に第一報を報じたニューヨーク・タイムズによると、捜査は首都ワシントンのコロンビア特別区を担当する検事局が主導しているとのこと
  • トランプ大統領のNBCニュースのインタビューにおける発言
    • 司法省が連邦準備制度を捜査していることについて、自身は一切把握していない
  • 連邦準備制度を監督する上院銀行委員会メンバーのThom Tillis上院議員(共和党)の声明
    • この法的問題が完全に解決するまで、次期FRB議長のポストを含め、FRBのいかなる候補者の承認にも反対する
    • トランプ政権の顧問たちが連邦準備制度の独立性を終わらせようと積極的に動いているのかどうかについて、わずかでも疑念が残っていたとすれば、もはや疑問の余地はない
    • いま問われているのは司法省の独立性と信頼性だ
  • 上院銀行委員会メンバーのElizabeth Warren上院議員(民主党)の声明
    • トランプ氏は、FRBの新議長を指名しパウエル氏をFRBの理事から永久に追放するという腐敗した手法で中央銀行の乗っ取りを完遂しようとしている
    • 彼は独裁者気取りで法律を濫用し、FRBを自身と億万長者の仲間に仕えさせようとしている
    • 上院はトランプ氏が指名したいかなるFRB議長候補者も承認してはならない

元々2025年にトランプ大統領はFRBの利下げが遅すぎるとして度々FRBを批判しており、パウエル議長の辞任要求/解任をほのめかしたり、2025年8月にLisa Cook理事の解任を発表したりしている。ただCook理事の解任については未だ審議が続いており、口頭弁論が1月21日に連邦最高裁で予定されている。


2026年1月12日(月)の米国市場

米国株式市場

主要3株式指数はFRBパウエル議長への捜査開始を受けて、中央銀行への独立性が損なわれるとの懸念から下落して取引をスタート。しかしその後は緩やかながらも上昇傾向となり、市場は思ったよりも冷静に受け止めたようだ。ニューヨーク証券取引所では値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を1.68対1の比率で上回っている。

これは昨年来トランプ大統領とFRBが金利政策に対して衝突しておりこのような事態もあり得ると考えられていたこと、また与党共和党からも今回の措置に対して懸念の声が上がっていることなどが市場にそれ程大幅な変動が無かった要因だろう。

また米大手銀行株は

と市場に比べて大きく下落しており、Mayo氏が名指ししたキャピタル・ワン(COF)が6.42%下落、シンクロニー・ファイナンシャル(SYF)が8.36%下落と下落幅が大きくなっていることからも、クレジットカードの金利上限に関するトランプ大統領の動きが影響したと思われる。

米国10年債

取引開始と同時にFRBの独立性への懸念から利回りは上昇したものの、その後は細かな上下動を繰り返しながらも利回りは低下傾向。終盤にやや利回りが上昇したものの、開場直後の利回りよりは低い水準で取引を終えている。

債券市場も株式市場と同様に、FRBへの操作を冷静に受け止めた様に見受けられる。

ドル円為替

先週末の取引は1ドル=157.9円前後で取引を終えていたが、週明け1月12日の取引では方向感が定まりにくい動きで1ドル=157円台後半から158円台前半での推移となっていた。

そして週明けの日本市場が始まる(月曜は祝日で休場)と共に、1月23日からの通常国会冒頭での衆院解散を検討しているとの報道影響でドル高傾向となり1ドル=158円台後半の取引となっている。

ドル円為替も株式、債券市場同様にFRBへの捜査はそれ程大きな影響を及ぼさなかった。


まとめ

以上、トランプ大統領がクレジットカード金利上限を1年間10%にすることの呼びかけ、FRBパウエル議長が大陪審の召喚状を司法省から受け取ったことについて整理するとともにそれらを受けての市場の動きについて確認してみた。

自分としては昨年来のトランプ大統領のFRBに対する攻撃から中央銀行の独立性に対する懸念が高まり、昨年夏頃にあったように市場が動揺するのではないかと危惧していたのだが、実際には上述した様に市場は特に大きな動きは無く、冷静に受け止めていた。

市場がトランプ大統領とFRBの確執をもはやあまり重要視しなくなったのか、それとも慎重に事態の推移を見守っているのかは不明だが、今回は無難に乗り切ったものの状況によっては市場に大きな影響を及ぼす可能性があることは頭に入れておいた方が良さそうだ。

そしてクレジットカードの金利上限の影響だが、覚悟はしていたがやはり大幅下落。トランプ大統領が1月20日と日付を明言していることもあり、今週行われる自分の所有銘柄JPモルガン・チェース(本日1月13日)、シティグループ(1月14日)の四半期決算発表でどの様な言及があり、それが株価にどう影響するかを注視しておきたい。更なる株価下落に繋がらないといいのだが。

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