買収発表後も落ち着かないワーナーブラザース動向(2025/12)

はじめに

2025年12月5日(金)には

ネットフリックスがワーナーブラザース買収を発表(2025/12)

でまとめた様にネットフリックス(NFLX)が自分の所有銘柄であるワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収(ワーナーブラザースの分社化が済んだ後(2026年半ば予定)に、ストリーミング中心の部門のみ)を発表したのだが、週が明けた2025年12月8日(月)のワーナーブラザース株は

再び4.41%の上昇となった。

以下に買収発表後もワーナーブラザース株が上昇した原因について確認しておくことにする。


ネットフリックスによるワーナーブラザース買収を受けての動き(2025年12月8日まで)

以下は2025年12月5日(金)時点の買収情報をまとめて以降の主な動き。

2025年12月7日(日)

  • トランプ大統領の記者団へのコメント
    • 非常に巨大な市場シェアがさらに大きくなる
    • その決定(ネットフリックスによるワーナーブラザース買収)には私が関与するだろう
    • それ(業界における市場支配力集中の可能性)はエコノミストが判断することだろうが、市場シェアは大きい。問題になる可能性は疑いようがない

2025年12月8日(月)

  • パラマウント・スカイダンス(PSKY)がワーナーブラザース・ディスカバリーに対する1084億ドル(1株あたり@30ドル)の敵対的買収案を発表
    • 我々の提案は、より強いハリウッドを創り上げると信じている
    • より高いヘッドラインの価値、その価値の確実性の向上、より高い規制の確実性、親ハリウッド、親消費者、親競争の未来を提供する
    • パラマウントの現金での提案には、トランプ米大統領の娘イヴァンカ・トランプ氏の婿であるJared Corey Kushner氏が経営する投資会社Affinity Partnersからの資金調達が含まれている
  • パラマウントの証券取引委員会への提出資料による経緯
    • パラマウントは9月にワーナー・ブラザースの入札を行ったが、その入札は拒否され、パラマウントがより良い条件を提示したという次の2つの入札も拒否された
    • 12月3日、ワーナーブラザースの最高経営責任者David Zaslav氏が、パラマウント・スカイダンスの会長兼CEOであるDavid Ellison氏に電話をかけ、パラマウントの入札に対するワーナー・ブラザース取締役会の懸念を伝える
    • 12月4日、パラマウント・スカイダンスの取締役会が以前のオファーを改善することに同意した後、David Ellison氏はDavid Zaslav氏に修正案のメールを送付
    • その後もDavid Ellison氏は条件の引き上げなどを伝えたが、David Zaslav氏の応答は無し
    • 12月5日、ネットフリックスによるワーナーブラザース買収が発表
  • ワーナーブラザースの取締役会は8日午後、パラマウントの提案を検討するとコメント
    • パラマウントの買収提案に関する取締役会の推奨について、10営業日以内に株主に通知する予定
    • ネットフリックスに関する情報は変更なし
    • パラマウントの提案に関して株主に対して、「現時点では何もしない」ことを推奨
  • ネットフリックスの共同最高経営責任者(CEO)Ted Sarandos氏のコメント
    • パラマウントによるワーナーブラザースへの敵対的買収は完全に予想されていた
    • パラマウントの提案では60億ドルのシナジー効果について言及されていた。このシナジーはどこから生じるのか。人員削減か。われわれは雇用を削減せず、創出する
  • トランプ大統領の記者団へのコメント
    • 私は両社のことをよく知っている。彼らが何をやっているかは知っている
    • しかし、彼らがどの程度の市場占有率を持っているのかを確認しなければならない
    • (娘婿の)Jared Corey Kushner氏とパラマウントによる買収についての話はしていない
  • ウォール・ストリート・ジャーナル誌が、ラリー・エリソン氏がネットフリックスの取引が金曜日に発表された後トランプ米大統領に電話をかけ、この取引は競争に打撃を与えると伝えたと報道
    • ラリー・エリソン氏(オラクルCEOで世界トップクラスの資産家、トランプ大統領との親密な関係で知られる)は、パラマウント・スカイダンスの会長兼CEOであるDavid Ellison氏の父親
  • トランプ大統領のSNSへの投稿(前提として共和党下院議員のMarjorie Taylor Greene氏がパラマウントが所有しているCBSの番組60 Minutesで、2026年1月での辞任を決めた経緯に関連してトランプ大統領を繰り返し批判していた)
    • この番組で私が本当に問題視しているのはIQの低い裏切り者ではなく、60 Minutesの新オーナーであるパラマウントがこのような番組の放送を許可していることだ
    • 彼らが買収して以来、60 Minutesは実際さらに悪化した!

ネットフリックスとパラマントのワーナーブラザース買収提案概要まとめ

以下は2025年12月8日時点でのネットフリックスとパラマントのワーナーブラザース買収提案概要。

NeflixParamaunt
1株あたり買収提示額27.75ドル30ドル
買収形態現金(24.45ドル)と株式現金のみ
買収対象配信事業と映画スタジオ全社(ケーブルテレビ事業も含む)
不成立時の違約金58億ドル50億ドル
ワーナーの違約金28億ドル29億ドル

2025年12月8日のネットフリックスとパラマントの株価

【ネットフリックス】

【パラマウント・スカイダンス】

ネットフリックスは12月5日(金)の2.89%下落に続いて続落。一方パラマウント・スカイダンスは12月5日(金)の9.82%下落をほぼ取り戻す上昇となっている。

ワーナーブラザースはパラマウントの敵対的買収案がネットフリックスの買収案を上回り全社が対象となっていることもあってか上昇、パラマウントはワーナーブラザース買収の目が完全に無くなったわけではないことで大幅上昇、ネットフリックスは買収の見通しが不透明となったことで続落となったのだろう。


まとめ

以上、12月5日(金)のネットフリックスによるワーナーブラザース買収発表以降の動きについて確認し、整理してみた。

ワーナーブラザースの取締役会がパラマウントの提案を検討するとしたため、この件が決着するには時間がかかりそうだ。またいずれにせよ買収が成立するには米国及び欧州の独占禁止法というハードルもある。

パラマウント側がトランプ大統領と密接な関係があるためパラマウント側が有利と見る向きもあるが、パラマウントが所有するCBSの番組に対してトランプ大統領が批判したことを考えると、必ずしもパラマウントが有利という訳でもなさそうだ。

12月5日の買収発表の際

「当初は単純に自分の所有銘柄であるワーナーブラザースがまずまずの価格で買収との発表に喜んでいたのだが、市場の反応を見ると買収完了に至るまでは一波乱、二波乱ありそうで、スムーズに買収成立とはならない気がする。」

と書いていた状況となったが、同じく書いていた通り

「今後もこの買収に関連する動きでワーナーブラザース株は大きく上下動する可能性があるため注意深く関連情報、株価の動きを見守っていくことにしたい。」

というスタンスは変わらない。最終的に自分が所有しているワーナーブラザースにとって有利な形で決着してくれることを願いたいが、一時ワーナーブラザース株は非常に低迷していたこと(半年少し前の第1四半期決算時は一株約9ドルと現在の株価の3分の1)を思い返して、短期的な動向に一喜一憂せず気長に待つことにしたい。

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