トランプ大統領が医薬品等への関税発動を発表(2025/9)

はじめに

自分は製薬企業ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY)を所有していることもあり、トランプ大統領が以前から検討している医薬品への関税については気にかかっていた。

2025年8月にブリストル・マイヤーズの2025年第2四半期決算をまとめた際(実際の決算は7月)には、「8月5日閉場後にはトランプ大統領がCNBCとのインタビューで「向こう1週間程度以内に半導体と医薬品に対する関税を発表する」、「医薬品には当初、小幅な関税をかける。だが1年から1年半の間に150%に引き上げ、最終的には250%にする。医薬品を自国で製造するようにしたいからだ」」と書いており、その後特段の情報/進展は無かったのだが、今回掲題の通りトランプ大統領がSNSに医薬品等に2025年10月1日から関税を課すことを発表している。

以下、その発表内容を確認しておくと共に、その後の動向についても整理しておくことにする。


2025年9月25日米国市場閉場後のトランプ大統領のSNSへの投稿

以下はトランプ大統領が2025年9月25日米国市場閉場後にTruth Socialに投稿した内容より引用・抜粋(定型句「Thank you for your attention to this matter!」を除いたのみ)。

  • In order to protect our Great Heavy Truck Manufacturers from unfair outside competition, I will be imposing, as of October 1st, 2025, a 25% Tariff on all “Heavy (Big!) Trucks” made in other parts of the World. Therefore, our Great Large Truck Company Manufacturers, such as Peterbilt, Kenworth, Freightliner, Mack Trucks, and others, will be protected from the onslaught of outside interruptions. We need our Truckers to be financially healthy and strong, for many reasons, but above all else, for National Security purposes!
    我が国の偉大な大型トラックメーカーを不公平な外部競争から守るため、2025年10月1日より、世界の他の地域で製造されたすべての「大型トラック」に25%の関税を課す。これによりPeterbilt、Kenworth、Freightliner、Mack Trucksといった我が国の偉大な大型トラックメーカーは、外部からの妨害の猛攻撃から守られることになる。トラック運転手の財務健全性と強靭性は様々な理由から不可欠だが、何よりも国家安全保障のためだ!
  • We will be imposing a 50% Tariff on all Kitchen Cabinets, Bathroom Vanities, and associated products, starting October 1st, 2025. Additionally, we will be charging a 30% Tariff on Upholstered Furniture. The reason for this is the large scale “FLOODING” of these products into the United States by other outside Countries. It is a very unfair practice, but we must protect, for National Security and other reasons, our Manufacturing process.
    2025年10月1日より、キッチンキャビネット、洗面化粧台、関連製品すべてに50%の関税を課す。加えて布張り家具には30%の関税を課す。諸外国から米国にこれらの製品が大量に「流入」しているためだ。非常に不公平な行為だが、国家安全保障などの理由から、製造工程を守る必要がある
  • Starting October 1st, 2025, we will be imposing a 100% Tariff on any branded or patented Pharmaceutical Product, unless a Company IS BUILDING their Pharmaceutical Manufacturing Plant in America. “IS BUILDING” will be defined as, “breaking ground” and/or “under construction.” There will, therefore, be no Tariff on these Pharmaceutical Products if construction has started.
    2025年10月1日より、米国で医薬品製造工場を建設中の企業を除き、ブランド医薬品または特許医薬品すべてに100%の関税を課す。「建設中」とは「着工中」または「建設中」と定義される。従って建設が開始されている場合は、これらの医薬品には関税はかからない

トランプ大統領のSNS投稿以降の動き

米市場での大手製薬会社株

自分が所有するブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMY)を含む大手製薬会社のトランプ大統領のSNS投稿を受けての株価は

と概ね堅調。S&Pヘルスケアセクターも前日比0.98%の上昇となっている。欧州の主要製薬会社株も概ね小動きで終えており、東証医薬品指数が1.39%下落したのとは異なる動き。ちなみに東証医薬品指数は週が明けた9月29日(月)も1.80%下落しており、29日の米国市場での製薬株の動向が不安ではある。

医薬品関税に関する追加情報

トランプ大統領のSNS投稿以降、以下の様な医薬品関税に関する動きがあった(時系列)。

  • 日本の赤沢経済担当相の発言
    • 日本は最も低い国の関税率を適用する最恵国待遇を確保している
    • 日本は米国との関税交渉で、半導体や医薬品など経済安全保障上重要な物資に分野別関税が課される場合、他国に劣後する扱いとならないことで合意し、今月まとめた共同文書に明記
    • 米国の動向を注視し、日米合意との関係も含め具体的な内容を十分精査しつつ適切に対応する
  •  欧州連合(EU)欧州委員会報道官のコメント
    • 7月末に合意した後に出されたEUと米の共同声明は医薬品、半導体、木材の関税は15%を超えないとしている
    • EUの輸出品に対するこの明確で包括的な15%の関税上限は、欧州の経済的事業者にとって、より高い関税が生じないという保険となっている

ここまでは米国市場開場前。

  • ホワイトハウス当局者のコメント(ロイター通信が最初に報道)
    • EUからの医薬品への関税は枠組み合意の条項に基づき15%に上限が設定される
    • また日本の医薬品にも、枠組み合意に定められた税率が課される
    • 英国は同様の免除規定を含む貿易協定を交渉しているが、医薬品の税率については両国はまだ合意に至っていないため、今回の関税の対象となる

まとめ

トランプ大統領の発表後の日本市場の製薬株が軟調だったこともあって、自分が所有しているブリストル・マイヤーズ株がどうなるかを注目していたのだが、結果的には上昇となってホッとしている。ひとまず自分が懸念していた程、米製薬企業にとっての悪材料とはならなかったようだ。

ただトランプ政権はブリストル・マイヤーズの第2四半期決算でも言及した通り、米国での薬価引き下げを製薬会社に要求し、その期限が9月29日となっている。ブリストルはファイザー社と共同で、消費者への直接販売することで現在の定価より40%以上の割引でEliquisを購入できるEliquis 360サポートプログラムを開始しており、他の製薬会社もこうした消費者への直接販売により薬価引き下げの試みを検討・開始している。こういった試みが政権にとって十分と見なされるのかについてはまだ不透明。

今回の医薬品に関する100%の関税や、薬価引き下げの試みなどが、総合的に見て製薬会社(自分の所有するブリストル・マイヤーズ)にどの様な影響を及ぼしていくことになるのか、注意しておく必要があるだろう。

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