はじめに
米現地時間2026年2月26日(木)の米国市場開場前には、ワーナーブラザースの2025年第4四半期決算発表があったのだが、そこでは買収に関する質問は受け付けておらず、事前に期待していたワーナーブラザースの買収に関するアップデートは無かった。
しかし同日の米国市場閉場後にワーナーブラザースの取締役会は、パラマウント・スカイダンスからの修正提案が「会社にとって優れた提案(Company Superior Proposal)」に該当すると決定(determine)と発表を行い、それを受けてネットフリックスが「パラマウントの最新提案に対抗するために必要な価格では、このディール(取引)はもはや財務的に魅力的ではないため、同社の提案に対抗することを断念する」と発表している。
以下、2月26日、27日のワーナーブラザース、パラマウント・スカイダンス、ネットフリックスの発表内容を確認すると共に、発表を受けて27日の3社の株価がどうなったかについて整理しておく。
現地時間2026年2月26日(木)3社の発表
ワーナーブラザース・ディスカバリー発表
以下はワーナーブラザース・ディスカバリーの企業ページより引用・抜粋。米国株式市場閉場後の17時前頃に発表。
- Warner Bros. Discovery, Inc.(WBD)は本日、取締役会が独立系財務・法律顧問と協議した結果、以前に開示されたParamount Skydance Corporation(PSKY)からの修正提案が、WBDとNetflix, Inc.(NFLX)との合併契約に定義されている「当社にとってより優れた提案(Company Superior Proposal)」に該当すると判断したことを発表
- 2026年2月24日にWBDが開示したように、PSKYの提案にはWBD株1株あたり31.00ドルの現金による買収価格に加え、2026年9月30日以降、四半期ごとに1株あたり0.25ドルに相当するDaily Ticking Fee、規制上の問題により取引が完了しなかった場合にPSKYが支払う70億ドルの規制解除料、既存のNetflix合併契約を解除するためにWBDがNetflixに支払う必要のある28億ドルの解除料のPSKYによる支払い、PSKYの融資銀行が要求する支払能力証明書をサポートするのに必要な範囲でラリー・J・エリソンと関連信託が追加の株式資金を提供する義務、WBDのグローバルリニアネットワーク部門の業績を除外する「企業への重大な悪影響」の定義が含まれている
- WBDは、PSKY提案が「会社にとって優位な提案」に該当するとの判断をNetflixに通知した
- Netflixとの合併契約条項に基づき、この通知から4営業日が経過し、NetflixはPSKY提案が「会社にとって優位な提案」に該当しなくなるよう、Netflix合併契約の修正を提案する権利を有する
- この期間終了後、取締役会が独立した財務顧問および法律顧問と協議の上、Netflixが提案したNetflix合併契約の修正条項を検討した上で、PSKY提案が引き続き「会社にとって優位な提案」に該当すると誠意を持って判断した場合、WBDはNetflix合併契約を解除する権利を有する
- Netflix との合併契約は引き続き有効であり、取締役会は引き続き Netflix との取引を支持するよう推奨しており、その推奨を撤回または変更していない
同日のネットフリックス発表
以下はネットフリックスの企業ページより引用・抜粋。ワーナーブラザースの発表直後17時過ぎに発表。
- Netflix, Inc.は本日、ワーナーブラザースに対する買収提案額の引き上げを辞退したことを発表
- Netflixはこれに先立ち、ワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)から、パラマウント・スカイダンス(PSKY)の最新の提案が、WBDとNetflixの既存の合併契約の条件に基づき「優良提案(Superior Proposal)」に該当すると取締役会が判断した旨の通知を受けていた
- Netflixは共同CEOのTed SarandosとGreg Petersによる以下の声明を発表
- 当社が交渉した取引は、規制当局の承認への明確な道筋を備え、株主価値を創出するものだった
- しかしながら、当社は常に規律を重んじており、パラマウント・スカイダンスの最新の提案に匹敵する価格では、もはや財務的に魅力的ではないと判断し、パラマウント・スカイダンスの提案に同調することを辞退する
- 私たちは、ワーナーブラザースの象徴的なブランドをしっかりと守ることができたと信じており、この取引によってエンターテインメント業界が強化され、米国における制作職の雇用が維持・創出されたであろうと確信している
- しかし、この取引は適切な価格で「あれば良い(nice to have)」ものであり、どんな価格であっても「必ず必要(must have)」というものではない
同日のパラマウント・スカイダンス発表
以下はパラマウント・スカイダンスの企業ページより引用・抜粋。発表はワーナーブラザース、ネットフリックスに続き現地時間17時半ごろ。
- パラマウント・スカイダンス・コーポレーション(PSKY)は、ワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)から、パラマウントによる1株当たり31ドルの全額現金によるWBD買収提案が、WBDとNetflix(NFLX)との合併契約条件に基づく「当社にとって優位な提案(Company Superior Proposal)」であるとWBDの取締役会が決定した旨の通知を受けたことを確認
- パラマウントの会長兼CEOであるDavid Ellisonは、「WBDの取締役会が当社の提案の優れた価値を満場一致で承認したことを嬉しく思います。この提案はWBDの株主に優れた価値、確実性、取引完了の迅速さをもたらします」とコメント
- パラマウント提案の合併契約
- WBD株1株当たり31.00ドルの現金購入価格
- 2026年9月30日以降、パラマウントとの取引が完了するまで四半期ごとに0.25ドルに相当するDaily Ticking Feeの支払
- 規制上の問題により取引が完了しなかった場合にPSKYが70億ドルの規制解除料を支払う
- 既存のNetflix合併契約を解除するためにWBDがNetflixに支払う必要のある28億ドルの解除料のPSKYによる支払い
- 債務交換提案に関連するWBDの潜在的な15億ドルの資金調達コストを削減
- 「会社への重大な悪影響(Company Material Adverse Effect)」の定義にはWBDのグローバルリニアネットワーク事業の業績は含まれない
- エリソン・トラスト(Ellison Trust)は457億ドルの株式拠出を約束しており、Larry Ellison氏は、パラマウントの融資銀行が要求する支払能力証明書をサポートするのに必要な範囲でパラマウントに追加の株式資金を提供する義務を含む、その約束を保証
- バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ、シティ、アポロは、575億ドルの債務コミットメントを提供
- パラマウントの提案する取引を開始するには、4営業日のマッチング期間の満了、Netflixとの合併契約の終了、パラマウントとWBD間の最終的な合併契約の締結が必要となる
現地時間2026年2月27日(金)3社の発表/動向及び株価
ワーナーブラザース・ディスカバリー及びパラマウント・スカイダンス発表
以下はワーナーブラザース・ディスカバリーの企業ページより引用・抜粋。米国株式市場閉場後に発表され、ワーナーブラザース及びパラマウントで同じ内容。
- パラマウント・スカイダンス・コーポレーション(PSKY)及びワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)は本日、パラマウントがWBDを買収し、消費者の選択肢を拡大し、世界中のクリエイティブな才能を支援することに重点を置く世界有数のメディア及びエンターテイメント企業を設立するという最終的な合併契約を締結したことを発表
- 契約条件に基づき、パラマウントはWBDの発行済み株式全株に対し、1株当たり31.00ドルの現金を支払う
- 本取引は両社の取締役会で全会一致で承認されており、規制当局の承認及びWBD株主の承認を含む慣例的な完了条件を満たし、2026年初春に投票が実施されることを前提として、2026年第3四半期に完了する見込み
- 本取引が2026年9月30日までに完了しない場合、WBD株主は完了まで、四半期ごとに1株当たり0.25ドルの「ticking fee」を受け取る(日次ベース)
- スカイダンス・コーポレーション傘下のパラマウント会長兼最高経営責任者(CEO)David Ellison氏のコメント
- ワーナーブラザース・ディスカバリー買収の取り組みは、当初から明確な目的に導かれてきた。それは、2つの象徴的な企業の伝統を尊重しつつ、次世代のメディア・エンターテインメント企業を築くというビジョンを加速させること
- 世界トップクラスのスタジオ、相互補完的なストリーミングプラットフォーム、そしてそれらを支える卓越した才能を結集することで、視聴者、パートナー、そして株主の皆様にとって、これまで以上に大きな価値を創造できるだろう。今後の展開に、これ以上ないほど期待している
- ワーナー・ラザース・ディスカバリーの社長兼最高経営責任者(CEO)David Zaslav氏のコメント
- WBDの株主とエンターテインメント業界のために得られた成果に大変満足している
- このプロセス全体を通して、私たちの指針としてきたのは、象徴的な資産と100年の歴史を持つスタジオの価値を最大限に高め、投資家の皆様に最大限の確実性を提供する取引を確保すること
- パラマウントと協力して、この歴史的な取引を完了できることを楽しみにしている
- パラマウントとワーナーブラザース・ディスカバリー合併による戦略的及び財務的メリット(詳細が説明されているが冗長になるので省略)
- 取引のハイライト
- パラマウントは、WBDの株式100%を1株あたり31ドルの現金と「ticking fee」を加算した金額で買収する
- これにより、WBDの株式価値は810億ドル、企業価値は1100億ドルと評価される
- パラマウントは、この買収により60億ドル以上のシナジー効果が得られると見込んでおり、技術統合(合併後の会社を単一のERPシステムに移行し、ストリーミング技術スタックを統合するなど)、調達コスト削減を含む全社的な効率化、統合後の不動産面積の最適化、その他業務効率の向上などによってもたらされる
- 完全なシナジー効果を考慮すると、WBDの価値は2026年のEBITDAの7.5倍となる。買収完了時のシナジー効果を考慮した純負債対EBITDA倍率は4.3倍になると予想しており、買収完了後3年以内に投資適格格付けへの明確な道筋が見えている
- この取引は、エリソン家とレッドバード・キャピタル・パートナーズが全額出資する470億ドルの株式によって賄われ、取引完了時には、この株式には他の戦略的パートナーや財務パートナーも含まれる可能性がある
- 株式投資コミットメントの条件に基づき、パラマウントのクラスB株式の新株が1株当たり16.02ドルで発行される
- この新たな現金株式投資に加え、この取引はバンク・オブ・アメリカ、シティグループ、アポロからの540億ドルの債務コミットメントによって支えられており、これにはWBDの既存のつなぎ融資枠を補う150億ドルと、追加的な新規債務390億ドルが含まれる
- パラマウントとWBD間の提案された取引には、いかなる資金調達条件も付帯しない
- 合併契約の締結に伴い、パラマウントはWBDの発行済み株式の全てを取得する全額現金による公開買付けを中止した
同日のネットフリックス発表
同日ネットフリックスは米証券取引委員会(SEC)に報告資料を提出している。主な点は以下の通り。
- ワーナーブラザースとの合併契約解消に伴い、パラマウント側が肩代わりした28億ドルの解約手数料を正式に受領
- ワーナーブラザース買収のために準備していたブリッジローン(短期融資)やクレジット契約が、買収断念により終了
- 買収に使用する予定だった手元資金の一部を株主還元に充てるため、既存の自社株買い枠を100億ドル追加
- 伝統的メディア資産の買収は長期目標に合致しないと判断し、広告支援層やライブ配信の強化など自社内投資(Organic Investment)に集中する
- 今後一定期間、Netflixが市場を通じてワーナーブラザースの株式を買い集めたり、敵対的買収を仕掛けたりしないことを約束する条項についての説明
2026年2月27日(金)の3社の株価



パラマウントはワーナーブラザースの買収、ネットフリックスは逆にワーナーブラザースの買収撤退をそれぞれ好感して大幅上昇。
一方でワーナーブラザースは下落しているが、これはネットフリックスが買収から撤退したことで、これ以上の買収価格上昇が無くなったことで投機的な投資家が手を引いたためなのだろう。
まとめ
以上2月26日、27日のワーナーブラザース買収に関する発表内容及び、発表を受けた27日の関係3社の株価について整理してみた。
ネットフリックスが米証券取引委員会への提出資料で、違約金を受け取ったこと、今後敵対的買収をしないこと等について言及し、その後ワーナーブラザースとパラマウントが正式契約の締結を発表したことで、ワーナーブラザースはパラマウントに買収されることが確定したと言える。
今後はワーナーブラザース株を所有している自分としては、各種規制当局の承認がいつ、どのタイミングで得られるのか(あるいは得られないのか)がポイントとなる。パラマウントの買収提示額である@31ドルを大幅に下回る下落には注意しておきたい。