ワーナーブラザースが戦略的代替案の検討開始(2025/10)

はじめに

米現地日付2025年10月21日(火)には自分の所有しているGEエアロスペース(GE)、コカ・コーラ(KO)、フィリップ・モリス(PM)の2025年第3四半期決算発表があり、それらの決算内容に注目していたのだが、同じく自分の所有しているワーナーブラザース・ディスカバリー(WBD)が掲題の発表をしており、株価が

と急上昇している。

以下にその内容と経緯/背景、その後の情報について整理しておくことにする。


2025年10月21日のワーナーブラザース・ディスカバリーの発表

以下はワーナーブラザース・ディスカバリーの企業サイトより引用・抜粋。

  • ワーナーブラザース・ディスカバリーは、先に発表したワーナーブラザースとディスカバリー・グローバルの分離を引き続き進めているが、同社取締役会は本日、同社全体とワーナーブラザースの両方に関して複数の関係者から一方的な関心が寄せられていることを踏まえ、株主価値を最大化するための戦略的代替案の検討を開始したことを発表した
  • このプロセスを通じて、ワーナーブラザース・ディスカバリーの取締役会は、幅広い戦略的選択肢を評価する
    • これには、026年半ばまでに計画されている分社化の完了に向けて引き続き前進させること、会社全体を対象とした取引またはワーナーブラザース事業とディスカバリー・グローバル事業のそれぞれについて個別の取引を行うことが含まれる
    • また検討の一環として、ワーナーブラザース事業の合併とディスカバリー・グローバル事業の株主へのスピンオフを可能にする代替的な分社構造も検討する
  • 社長兼最高経営責任者(CEO)David Zaslav氏のコメント
    • 当社のポートフォリオの大きな価値が市場の他の企業からますます高く評価されていることは驚くべきことではない
    • 複数の関係者から関心を寄せられたことを受け、当社は戦略的代替案の包括的な検討を開始し、資産価値を最大限に引き出すための最善の道筋を特定した
  • 取締役会会長のSamuel A. Di Piazza, Jr.氏のコメント
    • 今回の見直しを開始するという当社の決定は、株主にとって最善の価値を見極めるためにあらゆる機会を検討するという取締役会のコミットメントを強調するもの
    • 当社は、2つの異なる有力メディア企業を設立するための計画的な分社化が、魅力的な価値を生み出すと引き続き確信している
    • 事業範囲を拡大するためのこれらの措置を講じることが、株主にとって最善の利益となると判断した
  • 戦略的代替案の検討プロセスの完了期限や明確なスケジュールは設定されていない
  • 既に進行中の分社化を除き、このプロセスが当社による取引またはその他の結果の追求につながるという保証はない

2025年10月21日のワーナーブラザース・ディスカバリー発表に至る経緯

ワーナーブラザース・ディスカバリーが今回の発表に至った経緯は以下の通り。

元々直近の2025年5月の第1四半期決算発表をまとめた際にも自分は「会社分割や部門売却などで株価上昇の可能性も無くは無い」と書いており、ある程度は想定されていたことでもあったが2025年6月にワーナーブラザースは2026年半ば完了を目指しStreaming & StudiosとGlobal Networksに分社化する計画を発表(2025年7月28日に会社名をStreaming & Studiosは「Warner Bros.」、Global Networksは「Discovery Global」とすることを発表)。

分社化の目的は、それぞれの潜在能力を最大限に発揮し、成長機会を創出する事としていた。

2025年9月11日には、 パラマウント・スカイダンス(PSKY)がワーナーブラザースの買収を準備しているとウォール・ストリート・ジャーナル誌が報じたことで、ワーナーブラザース株は30%近い上昇。

しかし当時自分は「パラマウントとワーナーブラザースは正式にコメントしていないため過度な期待を抱くべきではないだろう。」と書いており、その後も進展を伝える報道は無かった。

2025年9月15日にはTD Cowenのアナリストが上記パラマウントによるワーナーブラザース買収準備の報道を受け、ワーナーブラザースの投資格付けを「Buy」から「Hold」に下方修正して株価は6%超下落。

パラマウントによる買収検討の報道は根拠が無く、報道を受けての株価上昇は投機的な性質を帯びており、パラマウントに代わる買収候補が限定されていること等を投資格付け引き下げの理由として挙げていた。

  • 10月12日にブルームバーグが、ワーナーブラザースがパラマウントの最初の買収提案を低すぎるとして拒否したと報道

関係者の話としてワーナーブラザースはここ数週間で、パラマウントからの1株あたり約20ドルというオファーを拒否。ただしパラマウント代表のデヴィッド・エリソン氏は、ワーナーブラザースへの入札において、提示額の増額、株主への直訴、金融パートナーからの追加支援の確保など、いくつかの道を探っているとのこと。

ちなみにこの報道(週末)があった後、自分はワーナーブラザース株が下落すると覚悟していたのだが実際は上昇となった。


ワーナーブラザースの発表を受けての報道等

  • ロイター通信
    • 情報筋からの情報によるとワーナーブラザース・ディスカバリーの取締役会は火曜日、パラマウント・スカイダンスからの約600億ドル(一株当たり約24ドル)のオファーを拒否した
    • 別の情報筋によるとコムキャストはワーナーブラザース・ディスカバリーの資産を調査する可能性が高い
    • CNBCの報道によるとネットフリックスも関心を寄せているとのこと
  • CNN(ロイター通信と重複しない情報)
    • 社長兼最高経営責任者(CEO)David Zaslav氏の従業員への社内メール
      • 潜在的な関心を評価し、デューデリジェンスを実施し、次のステップを検討するには時間がかかる。おそらく数週間から数ヶ月かかるだろう
  • バンク・オブ・アメリカのアナリストJessica Reif氏のコメント
    • ワーナーブラザースの資産を考慮すると、1株あたり30ドルの価値があると推定される
    • 同社の豊富なプレミアムIP(ハリー・ポッター、DC、ロード・オブ・ザ・リング、ゲーム・オブ・スローンズなど)と充実したライブラリーを考えると、ワーナーブラザースは非常に魅力的な潜在的買収ターゲットであると引き続き考えている
    • ワーナーブラザースはオファーについて正式なコメントはしていない
  • 同日閉場後に行われたネットフリックスの決算発表での共同最高経営責任者(CEO)Ted Sarandos氏のコメント
    • 当社はこれまで、従来のメディアネットワークを所有することに全く関心がないと明確に述べてきた
    • その点には何ら変わりはない

まとめ

以上ワーナーブラザース・ディスカバリーの発表とその経緯/背景、その後の情報について整理してみた。

株価やその後の報道等から見るとワーナーブラザースの発表は、複数の提案があることや今後の潜在的な買収提案について前向きな姿勢を示したものとして市場に評価されたようだ。しかもパラマウントの最新買収提案が一株当たり約24ドルだったとの報道から、買収が成立する場合はそれ以上となるだろうことも株価急上昇の一因だろう。

ただ時間外後には買収候補の一つとして挙げられていたネットフリックスが、従来ネットワークの買収には興味が無いとしたことで翌日の株価がどう反応するかには注意が必要だろう。

また買収が実際には成立した訳ではなくご破算になる可能性もあるし、今後買収が成立したとしてもその具体的な条件(金額、買収対象)がどうなるかは不透明である点も認識しておく必要がある。何とかワーナーブラザースの分社化/買収が上手い形で決着してくれることを願いたい。

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