トランプ大統領の対中関税発言トーンダウンと市場(2025/10)

はじめに

先週2025年10月10日(金)は

トランプ大統領が中国追加関税に言及し市場急落(2025/10)

でまとめた様にトランプ大統領がSNSに「APECでの米中首脳会談には意味がない」、「中国製品への関税の大幅な引き上げ可能性」を投稿したことで米国株式市場は急落。

そして米国市場閉場後には更にSNSへ中国へ「100%追加関税」、「ソフトウェア輸出規制」を「11月1日から」と投稿したことで、まだ取引がされていたドル円為替でドル安が一段と進行していた。

トランプ大統領は2件のSNS投稿の後、記者団に対して「(米中首脳会談は)開催されるかわからないが、私は現地に行くつもりだ。だから、おそらく行われることになるだろう」、「だから(発動日を)11月1日にした。どうなるか見てみよう」とSNS投稿からややトーンダウンした内容をコメントしてはいたが、自分は

「ただでさえ2026会計年度つなぎ予算が成立しない状況が続いている中で、10日には示唆されていた通り一部閉鎖政府機関の解雇が始まった(大規模と言われるが詳細は現時点では不明)とも伝えられており、週明けの米国株式市場は更に大きな下落となる可能性が高い。」

と書いていた。

以下、その後の状況と週明け10月13日(月)の米国市場がどう動いたかについて確認・整理しておく。


米中関税に関する状況アップデート

以下は2025年10月10日(金)以降の米中関税に関する状況のアップデート。日付はいずれも現地日付。

10月12日(日)

  • 中国商務省の報道官のコメント
    • トランプ大統領が来月から中国からの輸入品に100%の追加関税をかけると脅したことは、アメリカの典型的な二重基準の例だ
    • 高関税を課すと軽々しく脅すのは中国への正しい対応ではない。関税戦争に関する中国の立場は一貫しており、我々は戦いたくないが、戦うことを恐れてはいない
    • 最近、米国は貿易制限リストに中国企業が追加し、中国船に対する入港手数料の徴収をしているが、これらの行動は中国の利益を著しく損ない、二国間の経済貿易協議の雰囲気を悪化させた。中国はこれらに断固反対する
    • 中国がレアアースの輸出を規制することは、自国とその他のすべての国の安全保障を守るための「通常の行動」で正当なものだ
    • 軍事紛争が頻発している時期に、これらの金属が軍事用途に利用されることへの懸念が規制の動機である
    • 世界の産業チェーンとサプライチェーンの安全と安定の確保を強化するため、全ての国と輸出規制に関する対話を深める用意がある
  • Jamieson Greer米通商代表部(USTR)代表のFOXニュースでの発言
    • 我々は(中国のレアアース規制強化について)知らされていなかった
    • 米政府が中国との合意により高率の関税を自制したのに中国がレアアース輸出規制拡大を決めたことは明らかな合意違反だ
    • 公の情報から知った後、直ちに中国側に電話協議を申し入れたが、彼らは態度を保留した
    • 状況が落ち着くにつれて向こう1週間で市場も落ち着くだろう
    • (韓国で開催される)アジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせてトランプ氏と習氏が会談する可能性はまだある
  • バンス副大統領のFOXニュースでの発言
    • 多くの部分は中国がどのように対応するかにかかっている
    • 中国がとても積極的に対応する場合、米国大統領が中国よりはるかに多くのカードを持っているということを理解しなければならない
    • トランプ大統領と習主席は良い関係だが中国共産党政府の今回の措置にわれわれは本当に衝撃を受けた
    • 中国が合理的に出る用意があるならばトランプ大統領はいつでも合理的な交渉家になる準備ができている
  • トランプ大統領のSNSへの投稿
    • Don’t worry about China, it will all be fine! Highly respected President Xi just had a bad moment. He doesn’t want Depression for his country, and neither do I. The U.S.A. wants to help China, not hurt it!!!
      中国のことは心配するな、全て上手く行く!尊敬されている習近平国家主席は、一時的に判断を誤っただけだ。彼は自国が不況に陥ることを望んでいないし、私も同じだ。アメリカは中国を助けたいのであって傷つけたいのではない!!!

10月13日

  • ベッセント米財務長官のFOXビジネス・ネットワークのインタビューにおける発言
    • 先週の中国の動きは挑発的だったため、米国が積極的に対抗した
    • 週末に米中間で実質的な意思疎通があり、緊張は大幅に和らいだ
    • トランプ大統領は(新たな)関税措置は11月1日まで発動させないと表明した
    • トランプ大統領は韓国で習氏と会談する予定だ。会談は予定どおり行われると考えている
    • 今週にワシントンで米中事務レベル会合が開催される
    • 100%の関税を発動する必要はない
    • 先週の発表にもかかわらず、両国の関係は良好だ。コミュニケーションは再開されたので今後の展開を見守る

10月14日

  • 中国国営中央テレビ(CCTV)が米国が所有または運航する船舶や建造した船舶、または米国を船籍国とする船舶からの特別港湾料の徴収を正式に開始したと報道
  • 中国商務省が以下の声明
    • 先週発表したレアアース輸出規制については、導入前に米国に通知した
    • 13日には両国間で実務者協議も行われた
    • 輸出規制は国家安全保障を守るため
    • 米国は脅しをかけながら中国との交渉を求めることはできない
  • 中国商務省が以下の声明
    • 韓国の造船会社ハンファ・オーシャンの米国関連子会社5社は、米政府の関連調査活動を支援し、中国の主権、安全保障、発展上の利益を脅かした
    • 中国の組織や個人はこれらの企業と取引や協力、関連活動を行うことが禁止される
  • 中国運輸省が以下の声明
    • 米国が通商法301条に基づいて行った中国海運・造船業界への調査について、業界や関連するサプライチェーンの安全保障にどのような影響を与えるか考察している
    • 関連する企業、組織、個人がこれら分野と関連する産業およびサプライチェーンにおいて、中国に対する差別的制限措置を実施したり、米国を援助したりしたかどうかを調査する

2025年10月13日の米国市場の動き

米国株式市場

トランプ大統領が中国との貿易に対する強硬姿勢を和らげたことで貿易戦争を巡る懸念が和らいだため、米主要3株式指数はいずれも1%を超える上昇。ブロードコム(AVGO)がOpenAIにとって初となる自社製AI半導体の開発で提携すると発表したことで9.88%上昇し、同様にAI関連ハイテク株が好調に推移した。ただし主要3株式指数の上昇幅は10日(金)の下落を取り戻すほどの上昇にはなっていない。

米国10年債

米債券市場はコロンブスデーのため休場。

ドル円為替

10月10日のトランプ大統領の1回目のSNS投稿(上記チャート16:00前)で1ドル=152円台後半から1ドル=151円台半ばまで、更に2件目のSNS投稿(上記チャート22:00前)で1ドル=151円台前半までドル安が進んで週の取引を終えている。

取引再開となった際にはトランプ大統領が対中関税にやや融和的な姿勢を示していたことで、1ドル=151円台後半でのスタート。その後もややドル高となり1ドル=152円を挟んでの推移が続いている。


まとめ

冒頭に書いていた先週10月10日(金)の米国市場閉場後のまとめ以降、上述した様にトランプ政権が中国との関税交渉に軟化の姿勢を見せたことで、週明け10月13日(月)の米国株式市場は先週に覚悟していた様な下落とはならずに上昇して終えてくれた。自分の予想が外れてくれて本当に良かった。

ただし中国との関税交渉が決着した訳ではなく、米2026会計年度つなぎ予算にも進展は無く一部政府機関閉鎖は続いており(つなぎ予算案は10月9日(木)に上院で7回否決、次回は10月14日(火)予定)、14日には上述した様に中国が海運に関する各種対抗措置を発表しており、状況が必ずしも好転したわけではないので安心できる状況ではない点はきちんと認識しておきたい。

10月14日(火)からは米国企業の四半期決算が本格化し、10月に入ってからの自分の資産減少の要因の一つである自分のポートフォリオに占める割合が大きいシティグループ(C)の決算発表が予定されており、その結果に要注目。また同じく14日(火)にはDRBパウエル議長がフィラデルフィアで開催される全米ビジネス経済学会(NABE: National Association for Business Economics)年次総会で、米国の経済見通しと金融政策に関する基調講演(タイトルは「Economic Outlook and Monetary Policy」)を行う予定であり、政府機関閉鎖を受けて政府機関の経済データ発表が延期されている中(10月15日(水)予定だった米消費者物価指数(CPI)も24日(金)に延期)で、パウエル議長がどの様な発言をするかにも注目が集まっている。

2025年10月は既に自分の資産が減少し、上述して来た様に色々と気にかかる事が多いのだが、何とか上手く乗り切ってもらいたいものだ。

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