2025年9月発表の米個人消費支出(PCE)価格指数と市場の動き

はじめに

米国時間2025年9月26日(金)に2025年9月の米個人消費支出(PCE:Personal Consumption Expenditures)価格指数(Price Index)が米商務省の経済分析局(Bureau of Economic Analysis)から発表された。

9月になってから約1ヶ月程の米国株式市場は9月16、17日のFOMCでの利下げが有力視され、各種経済指標も概ね予想通りであったことから上昇傾向。そして実際にFOMCで利下げがなされ、同時にFRBから発表された経済予測要旨で年内さらに2回の利下げが有力となったこともあってその後も上昇傾向だった。

しかしその後FRBパウエル議長が9月23日の講演で年内の利下げに対して慎重な姿勢を改めて示した(FOMC後の会見でも同様のスタンスは示していた)ことで、株式市場は3営業日連続で下落となっていた。以下はS&P 500の推移。

インフレ圧力は根強い一方、労働市場がやや軟調となっている状況で、経済活動の3分の2以上を占めるとされる米個人消費支出がどうなるかは次回FOMCでの政策金利決定にかかわる指標として注目されていた。

以下、今回発表された8月の米個人消費支出(PCE)の内容を整理しておくと共に、それを受けて市場がどう反応したかを確認しておくことにする。


2025年9月26日米商務省経済分析局(U.S. Bureau of Economic Analysis)発表の2025年8月米個人消費支出(PCE)価格指数

以下の情報は米商務省経済分析局の発表資料より引用・抜粋。

  • PCE価格指数は前年同月比2.7%、前月比では0.3%上昇で、いずれも市場予想と同じ
  • 変動の大きい食品とエネルギーを除いたPCEコア価格指数は前年同月比2.9%、前月比では0.2%上昇で、いずれも市場予想と同じ

  • 現在のドルベースでの個人消費支出(Current-dollar personal consumption expenditures(PCE))は前月比0.6%増、市場予想は0.5%増
  • インフレ調整後の実質個人消費支出(Real PCE)は前月比0.4%増、市場予想は0.2%増


同日の市場の動き

米国株式市場

米国市場開場前に発表されたPCE指数を受けて上昇でスタート。その後やや下落したのは同日発表されたミシガン大学消費者信頼感指数確定値が55.1と速報値の55.4から予想外に下方修正されたことが影響したのだろう(その他指数も速報値から概ね下方修正)。ただ下落は一時的なものに留まり、最終的には主要3指数ともに3営業日連続の下落から上昇となっている。消費者支出が堅調なことが示された一定の安心感が市場に重要視されたのだろう。

米国10年債

PCE指数が発表された米国東部夏時間8:30は上記チャートのCDT(米国中部夏時間)では7:30。

目立った動きはなく利回りはやや上昇していたが、ミシガン大消費者信頼感指数を受けて利回りは低下。しかし株式市場同様に一時的なものに留まり利回りは前日比やや上昇して取引を終えている。総じて落ち着いた動きだったと言えるだろう。

ドル円為替

PCE指数の発表があった米EDT8:30は上記ドル円チャートのGMT+1の13:30。

それまで1ドル=148円台後半での推移が続いていたが、PCE指数の発表を受けて149円台へ。為替は株式/債券市場とは異なり、ミシガン大消費者信頼感指数の影響を受けることもなくドル高が続き1ドル=149円台半ばから後半での動きが続いたが、最終的には1ドル=149.45円で週の取引を終えている。


まとめ

今回、個人消費支出が市場予想を上回ったことで、インフレ圧力が未だ根強い中でも個人消費支出は堅調を維持し米経済をけん引していることが示唆される結果となった。主要3株式指数もそれを好感してミシガン大消費者信頼感指数の影響はありつつも、過去3営業日連続の下落からいずれも上昇して取引を終えている。

ただし、消費者支出は労働市場の堅調さと密接にかかわっている点は忘れてはいけないだろう。ここ最近の傾向である雇用の伸び減速、賃金上昇率の鈍化が続くようだと、消費者支出は減少し米経済の減速傾向が出てくる可能性も拭えない。

そうなると気になるのは次回10月3日発表予定の米雇用統計で、ここで改めて労働市場の軟調さが際立つと一波乱あるかもしれない。何とか労働市場が堅調に向かう兆しが伺えるといいのだが。

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