はじめに
2025年1月20日にトランプ氏が第47代アメリカ合衆国大統領に就任(2期目)してから4ヶ月と少しが経過したが、その僅間には様々な関税政策が実施(あるいは一時停止)されている。
ここでトランプ氏が2期目の大統領に就任してから5月31日まで、どの様な関税政策が発表/実施/一時停止されてきたかについて自分の情報整理も兼ねてまとめてみることにする。
2025年5月末時点のトランプ政権関税政策まとめ
以下、第2期トランプ政権下における主な関税政策に関する発表/実施/緩和・一時停止・延期を時系列で列挙する。あくまで米国から見た関税措置であり各国/地域からの報復関税については基本的に割愛している。
- 2025年1月21~23日
- カナダとメキシコからの輸入品に25%、中国へ10%の追加関税を2月1日に課すことを検討していると発表
- 2025年2月1日
- 2025年2月4日からカナダ、メキシコ、中国への追加関税を課す大統領を発令
- 2025年2月3日
- メキシコとカナダに対する追加関税措置を1ヶ月延期
- 2025年2月4日
- 中国への10%追加関税実施
- 2025年2月10日
- 2025年3月12日から鉄鋼・アルミニウム製品へ一律25%の関税を課すことを発表
- 2025年2月13日
- 貿易相手国が米国製品に課している関税の調査開始を指示する覚書にトランプ大統領が署名(調査は4月1日まで)
- トランプ大統領は記者団に対し、自動車、半導体、医薬品に対して輸入税を課すつもりとコメント
- 2025年2月27日
- 2月の中国への10%追加関税に更に10%上乗せすることを検討していると発表
- 2025年3月4日
- カナダとメキシコからの輸入品に25%(カナダ産のエネルギー資源は10%)の関税を、中国に更に10%の追加関税を課す措置が実施
- 2025年3月6日
- カナダとメキシコへの関税においてUMSCA(米・メキシコ・カナダ協定)の対象製品に関しては4月2日まで関税を免除すると発表
- 2025年3月12日
- 米国へ輸入される鉄鋼・アルミニウム製品へ一律25%の関税を課す措置が実施
- 2025年3月21日
- トランプ大統領がSNSに「April 2nd is Liberation Day in America!!!(4月2日はアメリカの解放記念日だ!!!)」と投稿し、4月2日の相互関税実施を示唆
- 2025年3月26日
- 米国へ輸入される自動車・自動車部品へ25%の関税を課す大統領布告を発令(実施は自動車は4月3日から、自動車部品は遅くとも5月3日から)
- 2025年4月2日
- 米国への全輸出国に基本税率10%、対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象に個別の上乗せ税率を発表
- 10%の基本税率は4月5日、上乗せ税率は9日に適用
- 2025年4月3日
- 米国へ輸入される自動車へ一律25%の関税を課す措置が実施
- 2025年4月5日
- 米国への全輸出国に基本税率10%を課す措置が実施
- 2025年4月7日
- トランプ大統領がSNSに、2025年4月8日までに中国が課した米国への関税34%を撤回しない場合、4月9日から中国に50%の追加関税を課すと投稿
- 2025年4月9日
- 中国へ2月の10%、3月の10%に加え、4月発表の中国分追加関税34%、前日の50%追加関税の合計104%を課す措置が実施
- トランプ大統領がSNSに以下の投稿
- 中国へ125%の関税を課す(実施は10日から)
- 中国を除く上乗せ関税が課された国へ関税を90日間一時停止することを承認(10%の基本税率は継続)
- 2025年4月10日
- 中国への追加関税措置が実施(トランプ大統領が前日のSNSに投稿した125%ではなく、2月、3月の20%に125%を追加した145%)
- 2025年4月11日
- 米税関・国境警備局が関税の対象外となる品目の一覧を公表し、スマートフォンなど20品目の電子機器への関税が免除されたことが明らかに(一律10%の関税も4月5日に遡って免除)
- 2025年4月29日
- トランプ米大統領が自動車・自動車部品に対する25%の関税について、控除や他の関税の免除を通じて負担を軽減する大統領令に署名
- 鉄鋼・アルミニウム関税の対象となるものは除く
- 2025年5月3日
- 米国へ輸入される自動車部品へ一律25%の関税を課す措置が実施
- 2025年5月8日
- 米国と英国が新たな貿易協定で合意を発表(締結はまだ)
- 2025年5月12日
- 米国は中国に対する関税率を5月14日までに145%から30%に引き下げ(これには違法薬物フェンタニルの流入に絡む関税20%も含まれる)、中国は米国に対する関税率を125%から10%に引き下げることで合意。期間は90日間
- 2025年5月14日
- 5月12日の合意に基づき米中がそれぞれ関税の115%引き下げを実施
- 2025年5月23日
- トランプ大統領がSNSに、2025年6月1日からEUに対して50%の関税を課すことを提言すると投稿
- 2025年5月25日
- トランプ大統領がSNSに、EUへの関税50%を2025年7月9日まで延長することに同意したと投稿
- 2025年5月28日
- 米国際貿易裁判所(CIT)は、国際緊急経済権限法(IEEEPA)に基づく相互関税などトランプ大統領が打ち出した関税措置の多くを違法と判断し、差し止めを命じる
- トランプ政権は直ちに連邦巡回区控訴裁判所に上訴
- 2025年5月29日
- トランプ政権の上訴を受け控訴裁は、同控訴裁が検討する間CITが下した判断を一時的に停止することを命じる(6月9日まで)
- トランプ政権は、IEEPA以外にも追加関税を課すために他に3つから4つの方法があるとしている
- 2025年5月30日
- トランプ大統領がSNSに、中国は米国との(5月12日の)合意に完全に違反したと投稿(詳細は述べず)
- その後ホワイトハウスで記者団に対し「習主席と確実に話し合う。うまく解決できることを願っている」とコメント
- 2025年5月31日
- トランプ大統領がペンシルバニア州での集会、SNSへの投稿で、鉄鋼・アルミニウムの関税を現行の25%から50%に引き上げる意向を表明(6月4日より)
まとめ
以上トランプ氏が第47代アメリカ合衆国大統領に就任してから2025年5月末までの関税関連の主な動きについて整理してみた(細かい抜け漏れはあるだろう)。
まとめてみると以下の様になる。
【2025年5月末時点で実施中の関税】
- 米国への輸入品に一律10%の関税
- カナダ・メキシコへUSMCAに準拠していない一部の製品に対して25%の追加関税(カナダ産エネルギー資源は10%)
- 中国へ30%の追加関税
- 鉄鋼・アルミニウム製品へ一律25%の関税
- 自動車・自動車部品へ一律25%の関税(一部控除措置あり)
【2025年5月末時点で先延ばしとなっている関税】
- 中国を除く4月2日に上乗せ関税が課された国への関税90日間一時停止(7月上旬まで)
- 中国への関税145%の90日間115%引き下げ(8月中旬まで)
- EUへの50%関税(7月9日まで)
【検討中の主な関税】
- 医薬品への関税(税率は不明)
- 半導体への関税(税率は不明)
- 鉄鋼・アルミニウムへの関税を現行の25%から50%に引き上げ(6月4日から)
年初来2025年5月末までのS&P 500の推移を見てみると
4月にはマイナス15%となる局面もあったものの、ほぼ年初と同等の水準まで戻っている。
とはいえ整理してきた様にトランプ政権の関税政策は落ち着いたわけではなく先延ばしや更なる関税を検討中のものがあること、また関税政策以外にもトランプ政権の政策に対する懸念材料がある(例:財政赤字など)ことを考えると、気の休まる日が来るのは一体何時のことになるのだろうか。自分の懸念が外れて堅調な株価推移が続いてくれることを願いたい。