2025年5月発表の米小売売上高/生産者物価指数と市場の動き

はじめに

米国時間2025年5月15日(木)に2025年4月の米小売売上高が米商務省国勢調査局から、生産者物価指数(PPI:Producer Price Index)が米労働省労働統計局からそれぞれ発表された。

2日前には米消費者物価指数(CPI)が米労働統計局から発表されており、その際には伸びが市場予想を下回ったが株式市場を除いて市場の反応は限定的で、株式市場の上昇もその前日に米中関税が90日間の一時引き下げに合意した流れを受けた可能性がある。

自分は米消費者物価指数(たまにPCE価格指数)をインフレに関連したデータとしてまとめ、米小売売上高/生産者物価指数はあまり詳しくは見ていないのだが、今回はなかなか興味深い内容となったので確認して整理し、それを受けて市場はどう動いたのかもまとめておくことにする。


2025年5月15日発表の2025年4月米小売売上高

以下の情報は米商務省国勢調査局の発表資料より引用・抜粋。

  • 2025年4月の米小売売上高は前月比0.1%の上昇、市場予想は横ばい

興味深いのは全体的に3月から上昇幅が減っているのだが、特に自動車の売上が3月の5.5%増から0.1%減に大きく変動している点。また自動車に限らず詳細13分野のうち7分野で前月比減少となっており、3月の統計ではトランプ大統領の関税発動を見越して購入を増やしていた米消費者が、今回の統計では逆に支出を抑制している状況が見て取れる。


2025年5月15日発表の2025年4月米生産者物価指数(PPI)

以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。

  • 2025年4月の生産者物価指数は前月比0.5%の低下、市場予想は0.2%の上昇

3月とは逆に4月はサービスが大きく低下、財が大きく増加している。

また資料によると

  • サービスの0.7%低下は、2009年12月に指数が始まって以来最大の低下
    • 下落の3分の2以上が貿易サービス部門のマージンが1.6%低下したことが要因
  • 食品とエネルギーを除くベースでは0.4%低下し、2015年以来の大幅低下
  • 食品とエネルギー、貿易サービスを除くベースでは0.1%低下し、5年ぶりの低下

等となっており、企業が関税引き上げによる影響を一部吸収していることが伺える。


同日の市場の動き

米国株式市場

主要3指数はまちまちな結果。これは上述した2つの経済指標から、景気減速/消費者心理悪化に対する懸念からマグニフィセント7に代表されるハイテク銘柄が伸び悩み、ディフェンシブ銘柄が堅調だったことが要因ということなのだろう。

その割にハイテク銘柄の比重が少ないダウ工業平均の上昇が少ないのだが、これは

顕著な下落となったダウ工業平均の算出方法を再確認(2025/4)

2025年5月発表の米消費者物価指数(CPI)と市場の動き

で触れたダウに占める割合の大きいユナイテッドヘルス・グループ(UNH)がウォールストリート・ジャーナル誌の報道から、メディケア不正の可能性について米司法省が同社に対して刑事捜査を開始したことでまたも10%を超える下落となったため。

米国10年債

2つの経済指標が発表された米国東部夏時間8:30は上記チャートのCDT(米国中部夏時間)では7:30。

小売売上高が市場予想を上回ったことから一時利回りは上昇したが内訳が認識されるにつれ、やはり経済指標で景気減速が示唆されたことが材料視されたのか利回りは低下傾向となり、そのまま取引を終えている。

ドル円為替

2つの経済指標が発表された米国東部夏時間8:30は上記チャートGMT+1の13:30。

発表前は1ドル=146円前後だったが、発表後は方向感に乏しい動きとなり、時間が経過するにつれてドル安傾向。一時1ドル=145円前後となったが、これを書いている米株式市場開場前時点では1ドル=145円台半ば程度の推移となっている。


まとめ

以上、両指標とも前月発表に比べて大きく内容が変わっていた米小売売上高/生産者物価指数とそれが市場に与えた影響について確認してみた。

僅か2日前の米消費者物価指数(CPI)ではインフレ抑制傾向が見られたが、今回の米小売売上高/生産者物価指数、特にその内訳をみるとインフレ悪化/景気減速/消費者心理悪化がまだまだ油断できない状況。個人的には経済指標が統一感のある結果となっていないのが、状況をより複雑にしている気がする。

4月に米国相互関税が発動して市場が急落してから、中国を除く相互関税上乗せ分の90日一時停止、米中の対立緩和期待、そして米中の90日間関税引き下げ合意でここ最近米株式市場は上昇しているのだが、今回の米小売売上高/生産者物価指数の様にそろそろ経済指標に4月の関税の影響が明確に表れそうであるため、株式市場が下落に転じる可能性も気に留めて覚悟しておきたい。

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