はじめに
米国時間2024年11月13日(水)に2024年10月の米消費者物価指数(CPI:Consumer Price Index)が米労働統計局から発表された。
前回2024年10月発表のCPIは市場予想をやや上回ったもののFRBの政策を変える程ではないとの見方から大きな変動は無かったが、同日あった米新規失業保険申請件数の発表結果が2023年8月以来最大だった一方で、主にハリケーンの影響によるものと考えられ判断が難しかったためか変動は小幅だが動きは激しかった。
CPI発表後の10月中旬以降は本格化した米国企業の決算結果の影響が大きかったり、近付いてきた米大統領選を意識してか、傾向がつかめない日が多かった気がする。
そして迎えた大統領選でトランプ氏が勝利したことで市場は大きく変動、それを受けて迎えたFOMC会合の結果とパウエル議長の発言が注目されたが、市場の予想通りの利下げ(0.25%)であり、スタンスも大きく変わらなかったため大きな変動は無かった。
まだ米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて未だ神経質な動きが続いている気がする米国市場だが、そんな中で今回のCPI結果、そしてそれを受けて市場はどう動いたのか。以下に確認して整理しておく。
2024年11月13日米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)発表の2024年10月消費者物価指数(CPI)
以下の情報は米労働省労働統計局の発表資料より引用・抜粋。
- 2024年10月の前月比消費者物価指数(季節要因調整済)は前月比0.2%の増加、市場予想も0.2%の上昇
- 2024年10月の前年比消費者物価指数(季節要因調整済)は全品目では2.6%上昇、市場予想も2.6%の上昇。変動の大きい食品及びエネルギーを除いたいわゆるコアCPIは前年比3.3%上昇、市場予想も3.3%の上昇、前月比では0.3%の上昇、市場予想も0.3%の上昇
- 家庭用食品(Food at home)は前年比1.1%上昇。2024年9月は前年比1.3%上昇
- 電気代(Electricity)は前年比4.5%上昇。2024年9月は前年比3.7%上昇
- 住居費(Shelter、主に家賃。サービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の2を占める)は前年比4.9%上昇。2024年9月は4.9%上昇
全品目の指数は前年同月比2.6%と2024年3月以来の伸びとなったが市場予想の通り。全品目の指数(総合CPI指数)よりも市場に重視されるコア指数(エネルギーと住居費を除く)においては、前月比コアCPIが5ヶ月連続で伸びている。
サービス分野で最大部分を占める住居費が前月の前月比0.2%上昇に対して0.4%上昇となり、総合CPIの前月比上昇率の半分以上は住居費が占めたと統計発表元の労働統計局は説明している。
ブルームバーグの算出によると住宅とエネルギーを除いたサービス価格は0.3%上昇。前月は0.4%上昇でやや伸びが鈍っている。
同日の市場の動き
米国株式市場
主要3市場とも方向感に乏しい動きで前日比ほぼ横ばいで取引を終えている。今回発表のCPIが市場予想通りでインフレ加速の傾向はみられなかったことで大きな変化が無かったのだろう。
米国10年債
取引開始直後は利回りが低下したものの、その後は新規社債発行に向けた動きが相次いたこともあって前日比で利回りが小幅上昇して取引を終えている。
CPIが市場予想通りで、次回12月のFOMCでの0.25%利下げ観測がより強まった(CMEのフェドウオッチによるとCPI発表前は12月の利下げ0.25%が約59%、CPI発表後は約82%)ことで、市場の見込み通りとなる可能性が高まったため10年債利回りに大きな変化は無かったのだろう。
ドル円為替
CPIの発表があった米ET8:30は上記ドル円チャートのGMT13:30。1ドル=155円前後からドル安となったが一時的なもので、その後は再びドル高傾向となりCPI発表前水準よりもドル高となっている。
CPI結果が市場予想通りだったこともあって、大枠ではトランプ氏が大統領選に勝利して以降のドル高傾向が続いたということなのだろう。
まとめ
今回はあくまで大統領選の結果が出る前の10月の消費者物価指数(CPI)結果であり、市場の予想とも一致したことから各市場とも大きな変化は無し。10年債やドル円為替は発表直後(株式市場の開始前)に変動があったが、結局前日比であまり変わらない動きとなっている。
今回の予想通りだったCPI結果とトランプ氏が大統領選に勝利して以降の市場の動きを考えると、株式市場は微妙だが、債券は利回り上昇、ドル円為替はドル高の傾向が続く可能性が高そうだ。12月のFRBによる利下げが有力で日米金利差は縮まるものの、トランプ氏が大統領選に勝利したことでインフレが持続して2025年の利下げペースが遅くなるとの見方が債券、為替では主流の様だ。
ドル高傾向が続くのは米国株資産を保持し、その配当金で配当金生活を送っている自分としては有利でもあるが、日本での生活はドル高の影響で物価が上がることにもなり痛し痒し。全てが上手くいく状況とはならないものだ。