GEエアロスペース2024年第3四半期決算(2024/10)

はじめに

2024年10月22日(火)には自分の所有銘柄であるGEエアロスペース(GE)の2024年第3四半期決算発表があった。

前回の2024年第2四半期決算は調整後売上高は市場予想に届かず、通年の調整後売上成長率も下方修正した一方で、EPSの市場予想は上回り、売上成長率以外通年の見通しも軒並み引き上げるなどまちまちな内容にもかかわらず5%を超える上昇。しかしその翌日は5%を超える下落となってしまい、

「決算を受けて「ある程度は安心して見ていられる日々が続きそうな気がしている。」と書いたが、翌日にはこの体たらくで先行きが不安になってきた。下落が単に一時的なものであることを願いたい。」

と書いていた。

今回の決算内容及びそれを受けてGEエアロスペース株はどうなったのか。以下に確認して整理しておく。


2024年第3四半期決算概要

以下の内容は、GEエアロスペースの企業サイトより引用・抜粋。

  • 2024年第3四半期の総売上高(Total Revenues)は98億4200万ドル、前年同期は93億200万ドルで前年同期比6%の増加
  • 2024年第3四半期の調整後売上高(Adjusted Revenues)は89億4300万ドル、前年同期は84億6100万ドルで前年同期比4%の増加
  • 2024年第3四半期の調整後一株あたり利益(Adjusted EPS)は1.15ドル、前年同期は0.92ドルで前年同期比25%の増加
  • 2024年第3四半期のフリーキャッシュフロー(純現金収支・Free Cash Flow)は18億500万ドル、前年同期は17億1600万ドルで前年同期比5%の増加

事業部別業績

【Commercial Engines & Services(CES:商用エンジン及びサービス)】

  • 受注(Orders):97億9900万ドルで前年同期比29%増加
  • 売上(Revenue):70億300万ドルで前年同期比8%増加
  • 収益(Operating Profit/(Loss)):17億9900万ドルで前年同期比16%増加
  • マージン(Operating Profit/(Loss) Margin):25.7%で前年同期は23.9%

【Defense & Propulsion Technologies(DPT:防衛及び推進技術)】

  • 受注(Orders):30億4400万ドルで前年同期比19%増加
  • 売上(Revenue):22億4300万ドルで前年同期比2%増加
  • 収益(Operating Profit/(Loss)):2億2000万ドルで前年同期比18%減少
  • マージン(Operating Profit/(Loss) Margin):9.8%で前年同期は12.2%

2024年見通し

2024年の通期見通しは以下の通り。

  • 調整後売上成長率(Adj. revenue growth):一桁台後半(HSD)(前回と変わらず)
  • 営業利益(Operating profits):67億~69億ドル(前回の65億~68ドルから上方修正)
  • 調整後EPS(Adjusted EPS):4.20~4.35ドル(前回の3.95~4.20ドルから上方修正)
  • Free cash flow:56億~58億ドル(前回の53億~56億から上方修正)

その他

その他決算発表及びアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。

  • 2024年第3四半期に13億ドル(790万株)の自社株買い戻しを実施
  • 2024年第3四半期にGEヘルスケア・テクノロジーズ(GEHC)1730万株を15億ドルで売却
  • サプライチェーンの制約がナローボディとワイドボディ全体の出荷に影響し、エンジンの総出荷数は4%減少(LEAPは6%減少)
  • CESでは引き続き2桁台前半から半ばの売上成長を予想
    • 2024年第4四半期もLEAPエンジンの納入は継続的に成長するが、通年では前年比10%減少となると予想
    • このガイダンスは、ボーイングへの継続的な納入を前提としている
  • DPTでは1桁台半ばから後半の売上成長を予想
  • 今年に入ってから利益と現金がともに10億ドル以上増加しているという当社の業績の好調さ、そして第4四半期の見通しを踏まえ通年のガイダンスを引き上げる
  • 当社は引き続きボーイングと緊密に連携し、現在の状況に対応できるよう同社を支援することに尽力する
  • 質疑応答
    • ボーイング777Xプログラムのさらなる延期発表がGEエアロスペースにどのような財務的、実際的な影響を与えるかについて
      • オペレーションの観点から言えば、GEエアロスペースではエンジンのテストを継続し、今後の生産拡大に備えるために行っていることに関して、実際には何の変化もない
      • 第4四半期には既にボーイングに出荷済みのものもあり、四半期の残り2ヶ月でさらに出荷される予定。2025年については、ボーイングの需要プロファイルに基づいて必要なエンジン数を検討中
      • このプログラムは今後10年間で拡大していくと想定しており、我々にとって重要なのはコストの削減を継続すること。Investor Daysで話ししたように、50台目のエンジンではコストの約30%が削減され、250台目のエンジンではさらに30%削減される予定
    • CESとDPTの両方で納品の遅延に関連する可能性のある顧客への補償または罰金について
      • 計上する必要のあるすべてのものは当然計上しており、それはガイダンスに組み込まれている
      • 第3四半期の納品は前四半期比で改善しており、第4四半期にもサプライチェーンの課題を乗り越えるにつれて、さらに改善していく
      • 現時点では流動性損失や罰金の面で大きな問題はない

市場予測との比較

今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、

  • 2024年第3四半期の調整後売上高(Adjusted Revenues)は89億4300万ドル、市場予想の90億2000万ドルを下回っている
  • 2024年第3四半期の調整後一株あたり利益(Adjusted EPS)は1.15ドル、市場予想の1.14ドルをやや上回っている

となっている。


まとめ

上記の様な決算を受けてGEエアロスペースの株価は

前日比9.05%の下落。同日の米国市場が

終盤に持ち直してほぼ横ばいだったのと比べると、GEエアロスペース株の下落は急落といってもいいレベル。EPSは市場予想を上回り、通期見通しも引き上げたにもかかわらずこの下落は納得がいかないのだが、第3四半期の売上が市場予想を下回り、通期見通しでも売上は据え置きだったこと、そして続くサプライチェーンの制約、ボーイングの問題、LEAPエンジンの納入が前年比で振るわなかった点などが嫌忌されたのだろう。

年初来のGEエアロスペース株の推移を市場(S&P 500)と比べてみると

冒頭に挙げた7月下旬の第2四半期後の上下動を経た後は、8月頭9月頭の市場大幅下落時同様に下落したものの、9月中旬からはボーイングのストライキが続く中でも上昇基調となり、前四半期決算を経ての不安は当たらず。そして今回決算前には年初来90%を超える上昇となっていたのだが、今回決算で約73%の上昇となった。それでも年初来ではS&P 500のパフォーマンスを大幅に上回っている。今回決算で大きく下落したのは利益確定売りの側面もあったのかもしれない。

今後のGEエアロスペース株だが、流石に今回決算の下落は下がり過ぎだろうと思う一方で、ボーイングへの継続的なエンジン納入が見通しの前提となっていることもあり10月23日のボーイング決算発表の内容でブレる可能性はある。短期的にはサプライチェーンの制約がなくなってはいないことも含め、年初来今回決算前までのような株価上昇は期待しない方が良いだろう。


補足

GEエアロスペースの2024年第3四半期決算発表の翌日10月23日にはカンファレンスコールでも触れられ気になっていたボーイング(BA)の決算発表があり、米国市場が

下落する中でボーイング株は

1.76%と予想していた程悪くない下落に留まっている。ボーイングの決算内容はまだ確認していないのだが同日のGEエアロスペース株は

2.85%の上昇となっており、ひとまずボーイングからの悪影響は被らなかった模様。

と思っていたのだが、米国市場閉場後にボーイングのストライキへの投票が実施され、ストが続行されることになってしまった。これを受けてボーイングの決算発表からまた状況が変わってしまい、GEエアロスペース株に悪影響が出なければいいのだが。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする