はじめに
2024年7月29日(月)には自分が所有しているマクドナルド(MCD)の2024年第2四半期決算発表があった。
「他の自分所有米国銘柄の決算ではインフレ/経済が底を脱しつつある旨に言及する企業が多かった印象があるのに対して、マクドナルドはそれらとは異なり決算からまだインフレ/経済の状況が改善しているとは言い難そうなことを考えると軟調な展開が続きそうだ。何とか踏みとどまって次回四半期決算で改善の兆しを示してくれるといいのだが。」
と書いており、実際あまり良いパフォーマンスではなかった印象がある。
そんな状況の中、今回の2024年第2四半期決算はどうだったか。以下にその結果・内容を整理しておく。
マクドナルド2024年第2四半期決算概要
以下の情報はマクドナルドの企業サイトより引用・抜粋。
- 2024年第2四半期の総売上高(Total Revenues)は64億9000万ドルで、前年同期とほぼ変わらず
- 2024年第2四半期の純利益(Net Income)は20億2200万ドルで、前年同期比12%減少
- 2024年第2四半期のTotal operating costs and expenses(総営業コスト及び経費)は35億7000万ドルで、前年同期比5%増加
- 2024年第2四半期のGAAPベース希薄化後1株当たり利益(Earnings per share-Diluted)は2.80ドルで前年同期比11%減少(恒常為替ベースでは10%減少)。Non-GAAPベースでは2.97ドルで、前年同期比6%減少(恒常為替ベースでは5%減少)
既存店売上
2024年第2四半期の既存店売上は以下の通り。
今四半期の米国既存店売上は前年比0.7%減。世界全体では1.0%減ですべてのセグメントで前年同期比マイナスとなっている。
2024年通期見通し
2024年通期の見通しは以下の通り。
- 営業利益率(Operating margin):40%半ば~後半(前回と変わらず)
- 資本的支出(Capital Expenditure):25~27億ドル(前回と変わらず)
その他
その他決算及びカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 昨年から我々は特に低所得世帯の消費者の選り好みが厳しくなると警告してきた
- 今年に入ってこうした圧力は深まり広がっている。QSR(Quick Service Restaurant:ファーストフード)部門はほとんどの市場で大幅に減速し、米国、オーストラリア、カナダ、ドイツなどの主要市場では来客数が減少し、いくつかの市場では中東戦争による悪影響も続いている
- こうした外部からの圧力は、世界規模および各セグメントで既存店売上高の減少を伴い、四半期の業績に確実に重くのしかかった。しかし、業績不振の中で当社が管理できる要因もあり最も顕著なのはバリュー実行である
- 我々は、市場の状況にかかわらずすべての主要市場でシェアを再び伸ばす決意である。これは一夜にして実現するものではないが、必ず実現する。マクドナルド独自の競争優位性により、我々は多くの手段を講じることができ必要に応じて投資を継続できる資金力も備えている
- 消費者は依然として当社を主要な競合他社に対するバリューリーダーとして認識しているが、バリューリーダーとしての当社の差は最近縮まっていることは明らかで、当社はこの差を迅速に是正すべく取り組んでいる
- 北米における非常に競争の激しい環境において、お客様は少なくとも今後数四半期は経済の圧迫と生活費の高騰を感じ続けると予想している
- 米国では6月末から5ドルのセットメニュー販売を開始し、販売数は予想を上回っている。このセットの注文率は低所得層の消費者の間で最も高く、価値と手頃な価格に関するブランドに対する感情は前向きに変化し始めている
- 海外事業展開市場における既存店売上高マイナスは、フランスにおいて顧客が引き続きより慎重になっているという幅広い圧力を反映している
- IDL部門では、中南米と日本での好調な既存店売上高が中東で続く戦争と中国の影響で相殺された
- 消費者の変化に関する質問
- 昨年、消費者、特に低所得の消費者に対する圧力がいくつかの主要市場で顕著だったことは述べた通り
- その後より多くの市場で同様の減速が見られるようになった
- 確かに低所得の消費者で最も顕著だが、特にヨーロッパの家族を中心により大きなグループにも影響が出ている
- 多くの市場で消費者が非常に選り好みしており、主要市場のほとんどで消費者心理が低迷している
- フランスと中国の状況に関する質問
- フランスでは減速が見られ、シェアが失われているという事実も正確に反映されている
- フランスは現在非常に競争の激しい市場であり価格設定で積極的な競合他社がいる
- またフランスは家族連れのビジネスが非常に有意義であり、安価な商品を望む傾向が強い
- フランスはイスラム教徒の人口が多い市場のひとつであり、フランスで見られる影響はその人口のためおそらく他の市場よりも大きい
- 裏を返すとフランスで再び成長をシェアするチャンスがあるとも言える
- 中国も現在非常に競争の激しい環境であり、消費者心理は非常に弱く我々の業界だけでなく幅広い消費者業界で消費者が特にお買い得品を求めていることが見て取れる
- 中国のこうした環境において当社はシェアを維持しており、新規出店による利益は依然として良好である
- 当社の観点からすると新規出店による成長には大きな余地がある。もし新規出店が当社が許容できる利益の閾値を下回ることがあれば、中国での出店ペースを間違いなく見直すだろうが、現時点では新規出店による利益は維持されていると見ている
- 今年後半の見込みに関する質問
- 業界と消費者は世界中のほぼすべての大規模マーケットで圧力を受けており、我々は将来がどうなるか予言しているわけではないが、今後数四半期で環境が変化するとは考えていない
- 価値と手頃な価格の提案が実現し、各市場で勝利のポジションを獲得できれば消費者が可能なときに戻ってくるようになると確信している
- 我々が注力しているのは現在の状況で各市場において確実に勝利することであり、今後各市場でこの困難な環境が好転し始めるにつれ当社は勢いを加速できる立場にあると考えている
- 上半期を通じて売上高の伸びは鈍化したが、レストランの利益率はかなり持ちこたえている
- 今年については直営店利益率を基準にすると2023年末の水準から若干下がることは確実に予想できる
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2024年第2四半期の総売上高(Total Revenues)は64億9000万ドル、市場予想の66億1000万ドルを下回っている
- 2024年第2四半期のNon-GAAPベース希薄化後1株当たり利益(Earnings per share-Diluted)は2.97ドル、市場予想の3.07ドルを下回っている
- 2024年第2四半期の世界の既存店売上高は1.0%減、市場予想の0.5%増を下回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算内容を受けてマクドナルドの株価は
前日比3.74%の上昇。同日の米国市場が
方向感が定まらず前日比ほぼ変わらずだったのと比べるとマクドナルドの上昇幅は大きい。市場予想を下回る売上、EPSであり、消費者心理への圧力が今後も続くであろうことを考えると上昇したのは不可解だが、6月末から北米で開始した5ドルのセットが低所得者層の間で予想を上回る販売となっていることが材料視されたようだ。個人的にはそれだけでは上がり過ぎの様な気がするのだが。
決算後数日を含めた年初来のマクドナルド株の推移を市場(S&P 500)と比べてみると
第1四半期決算以降は冒頭に挙げた予想通りに市場の上昇に反して下落傾向が続いていた。しかし今回の決算で上昇した後は、市場が大きく下落したのに対して上昇が続いている。それでも年初来マイナスに沈んでいるのだが・・・。
今後のマクドナルド株だが、今回の決算を受けての勢いが続くのか、それとも一時的なものに終わるのかが気にかかる。個人的には先に挙げた低所得帯向けのセットメニューの効果が業績にどれ程の影響を与えるかが不明な現時点では長続きしない気がするのだが、予想に反して堅調な株価上昇になってくれると有難い。