はじめに
2023年3月は、2月半ばからの経済指標がインフレ圧力が根強いことを示唆して利上げが続く事への懸念や、米銀の破綻を契機とした銀行システムへの不安などから市場、そして自分の資産が大きく下落/減少している。
2023年はそちらの方に目が取られがちだったのだが、気が付くと自分の主力銘柄の一つであるエクソン・モービル(XOM)がここ最近市場に比べて大きく下落していた。
調べてみると掲題の通り、原油先物価格(ピンク)が直近で特に大きく下落しているのがエクソン株下落の原因の様だ。
そこで最近の原油先物価格が何故下落しているのかを確認して整理しておくことにする。
2023年3月のニューヨーク原油先物関連情報
【3月6日まで】
- 2月22日に1バレル=75ドルを割ってから上昇傾向が続き、3月6日は1バレル=80ドル台に到達
- 3月1日にサウジアラビアの国営石油会社、サウジアラムコのアミン・ナセルCEOがリヤドで行われたインタビューで「中国からの需要は非常に強い」と発言
【3月6日~10日】
- ヒューストンでS&P主催のエネルギー業界の国際会議CERAWeekが開催
- 石油輸出国機構(OPEC)のガイス事務局長の発言
- 中国の経済再開を受け、われわれは慎重ながらかなり楽観的だ
- 中国の今年の石油需要は、新型コロナウイルス関連規制の解除を受けて日量50万~60万バレル増加する見通し
- 今年の世界石油需要についてOPECは日量230万バレルの増加を見込んでいる
- クウェートの国営石油会社クウェート・ペトロリアム(KPC)のナッワーフ・アル・サバーハ最高経営責任者(CEO)の発言
- 世界の石油市場は少なくとも今年上半期は需給が均衡する見通し
- 中国の需要が持続的に増加しておりロシア産原油の価格が下落してもクウェートの中国での市場シェアは低下していない
- KPCの顧客は石油供給の削減も拡大も求めていないが、潜在的な景気後退が世界経済と石油市場に及ぼす影響に引き続き留意している
- クランホルム米エネルギー長官の発言
- 戦略石油備蓄(SPR)から1億8000万バレルを放出したのは戦争のためだった
- 放出は、価格の上昇だけでなく突然の混乱について世の中の関心を生むような状況でなければならない
- アンゴラのバローゾ鉱物資源・石油・ガス相の発言
- ロシアの日量50万バレルの減産(欧米の制裁に対し3月から実施)を補うために石油輸出国機構(OPEC)が増産する必要はない
- 彼ら(ロシア)は方法を見つけ、新しい市場(中国、インドなどは制裁を科していない)を見つける。市場は均衡している
【3月7日】
- 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が上院銀行委員会で行った証言で、「経済データが全体としてより速い引き締めを正当化するのであれば、利上げペースを加速させる必要があるだろう」などと発言
【3月14日】
- 石油輸出国機構(OPEC)が月報を発表
- 2023年の中国の石油需要予想を上方修正し、前年より日量71万バレル増との見通し(2月の月報は59万バレル増)
- 上方修正の理由はCOVID-19のパンデミック対策が緩和されたこと
- 2023年の世界石油需要が日量232万バレル増える見通しは据え置き
- 中国を上方修正した一方で、米欧などの地域の見通しを引き下げたのが要因
- 厳格な『ゼロコロナ』政策解除に伴う中国の(経済活動)再開は、世界経済の成長に相当な勢いを与えるが、金利と世界の債務水準の急速な上昇は重大な負の波及効果を引き起こし、世界経済の成長の動きに悪影響を及ぼす可能性がある
【3月16日】
- サウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相とロシアのノバク副首相が、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成するOPECプラスの市場の均衡と安定を維持するための取り組みについて協議
- 2023年末まで日量200万バレルの減産を行うというOPECプラスの2022年10月の決定へのコミットメントを確認
【3月18日】
- ゴールドマン・サックスがブレント原油が今後12ヶ月で1バレル=94ドル、2024年後半には97ドルに上昇すると予想を下方修正(従来は年内に100ドルに上昇すると予想)
- 中国での需要急増にもかかわらず、銀行のストレスや景気後退懸念、投資家の資金流出により原油価格は急落している
- 価格は徐々にしか回復せず、期限の長い先物価格は特にそうだ
まとめ
直近の原油に関する情報を確認してみたが、ゴールドマン・サックスが原油価格予想を下方修正したほかは意外にも概ね悪材料は無かった。基本的には中国の政策転換による需要増が原油価格に好影響をもたらすとの見方が主流となっている。
ここ最近の原油先物価格の大きな下落は需給の不均衡ではなく、利上げ見込が強まって景気減速を招き原油需要を下押しする懸念や金融不安によってもたらされている様だ。この見込みが正しいとすると原油市場はやがて落ち着くのかもしれない。
ただしそれは利上げや金融不安などの現在の原油価格押し下げ要因があくまで一時的なものであるという前提に基づくもの。直近の銀行関連の不透明さを考えると楽観はできないだろう。そうなると俄然気になるのが本日21日、22日の両日に行われるFOMC会合と政策金利、そしてパウエル議長の会見だがどうなることか。昨今の事情を考えるとどう転ぶかがさっぱり予想がつかない。何とか傷が少なくこのイベントを乗り切ってくれるといいのだが。