はじめに
昨日はAT&T(T)がまたも非中核資産の売却を行った事をまとめたが、その際にAT&T株の5日、6日の上昇は売却報道ではなく、北米で先週公開されたワーナー・ブラザースの「Godzilla vs. Kong」の影響があったようだと書いた。
本日はその内容について整理しておくことにする。
先週北米で公開された「Godzilla vs. Kong」の興行成績
北米での「Godzilla vs. Kong」公開は3月31日(水)。以下のデータはVarietyより。
【Godzilla vs. Kong】
初週末3日間(金、土、日)での劇場売上:3200万ドル
公開からの5日間での劇場売上:4850万ドル
これはCOVID-19が蔓延してから最大のヒットとのこと。ちなみにそれまでCOVID下での公開直後に劇場売上が大きかったのは
【Wonder Woman 1984(2020年12月)】
初週末3日間(金、土、日)での劇場売上:1670万ドル
【Tom and Jerry(2021年2月)】
初週末3日間(金、土、日)での劇場売上:1400万ドル
これらはいずれもAT&T傘下のワーナー・ブラザースの作品。ちなみに2021年3月にはウォルト・ディズニー(DIS)の「Raya and the Last Dragon(邦題:ラーヤと龍の王国)」も公開されているのだが、こちらは
【Raya and the Last Dragon(2021年3月)】
初週末3日間(金、土、日)での劇場売上:800万ドル
とボックス・オフィス・プロの予想約1200万ドルの興行収入を下回っている。
HBO MaxとDisney+の劇場公開とストリーミングサービス組み合わせ戦略
上に挙げた興行収入はあくまで劇場公開のみ。HBO MaxとDisney+はそれぞれ微妙に異なる戦略を取っている。
【HBO Max】
- 劇場公開と同時にHBO Maxで公開
- 2021年中はHBO Max加入者は追加料金なしで公開後1ヶ月間視聴する事が出来る
- その後PVOD(プレミアム・ビデオ・オン・デマンド)で有料配信
【Disney+】
- 劇場公開と同時にDisney+で公開
- 同じタイミングでの視聴は30ドルの追加払いが必要
- 3ヶ月後に会員は無料で視聴できるようになる
ウォルト・ディズニーは「Raya and the Last Dragon」を追加30ドル支払って視聴したユーザ数を公開していないので一概に劇場興行収入だけでは判断できないし、当然作品自体の良し悪しが一番大きな要因だとは思う。とはいえ上に挙げたウォルト・ディズニーとワーナー・ブラザースの最近公開された映画の売上を見ると興味深い。
ただ最初にワーナーメディアがこの戦略を発表した際は、
ワーナーメディアがハイブリッド配給モデルを発表(2020/12)
上手く機能するか懸念もあったのだが、今の所はHBO Maxの戦略は悪くなさそうに思える。ただこれがHBO Maxの加入者やワーナーメディアの業績改善にどの程度影響を及ぼしているかはまだ不明瞭な点が多い。
まとめ
昨日も書いた通りAT&Tの株価は「Godzilla vs. Kong」の劇場興行収入が堅調だったおかげか5日が0.79%、6日が0.88%それぞれ上昇している。さすがに昨日7日は0.16%マイナスで先週1日(金)からの4日間連続上昇とはならず。
ただ、コロナから1年が経過した現在AT&T株を振り返ってみると。AT&Tの株価はコロナから未だ回復しない。以下は過去2年のAT&Tとダウ工業平均のチャート。
2020年5月末のHBO Maxサービス開始の時までは何とか市場並みだったが、それ以降は市場が上昇する一方、AT&Tの株価は平均するとほぼ横ばい。2021年3月になってやや上向き(それでもようやく市場と同程度の伸び)。
劇場もまだ稼働が従来の半分程度という事なので、ワーナーメディア部門が劇場やHBO Maxで売上・利益を更に伸ばしてくれれば、AT&T株ももう少し上昇の余地があると思うのだが。
現在の自分のAT&Tは
とまだ取得価額に比べて10%程度のマイナス。自分のAT&T株が再び取得価額比プラスになるのは一体何時の事になるのだろうか。
と書いてみたのだが冷静に確認してみると、1年少し前の2020年2月末の急降下前までは取得価額比プラスだったのか。自分で思っていたよりも取得価額を下回っている期間は続いていなかった。
過去5年のチャートを見てみると2018年から2019年にかけてAT&T株がやはり低迷し、取得価額割れをしていた時期があったのでそれが続いていると勘違いしていたようだ。
コロナ以降冒頭に上げた資産売却やHBO Maxの開始などそれなりに動きはあるのだが、株価には思ったほど反映されていないのがよく分かる。やはり気長に待つしかないのだろうか。