ボーイング777エンジン損傷後のBA/GE株価(2021/2)

はじめに

日本時間2021年2月21日(現地時間2月20日)にボーイング777-200型機のエンジントラブルが発生して部品が落下したことについては、2月19日(金)のボーイング株が上昇したことについてまとめたもの

2021年2月19日のボーイング(BA)株4%超上昇について、他

の追記で触れたが、では実際に週明けのボーイング(トラブル機体本体を製造)、そして関連するであろうレイセオン・テクノロジーズ (RTX)(トラブル機のエンジンを提供)、ゼネラル・エレクトリック(トラブル機ではないが777-200型機にエンジンを提供)の株価はどうなったかについて確認してみる。


2021年2月22日米市場閉場後の株価

3社の株価は以下の通り。

【ボーイング(BA)】

【レイセオン・テクノロジーズ (RTX)】

【ゼネラル・エレクトリック(GE)】

ボーイングとレイセオンはある程度下がったがそれ程でも無く、ゼネラル・エレクトリックに至っては大幅な上昇。

ただボーイングとレイセオンの下落も同日のダウ工業平均が0.09%の上昇、S&P 500が0.77%、NASDAQが2.46%下落したことを踏まえると、予期していたほどの下落とはならなかった。

現時点(2021年2月23日)での報道では、レイセオンが提供しているエンジン(プラット&ホイットニーのPW4000)の金属疲労が原因では?ということらしいが、このエンジンを積んでいる機体は限定されている(777-200型機のエンジンはレイセオンのプラット&ホイットニーのPW4000、GEのGE-90、ロールスロイスのTrent(トレント)800シリーズから選択)ので、ボーイングのイメージ失墜は当然あるだろうが、737MAX型機の墜落ほどの大きな影響はなさそうだ。あくまで現時点では、であるが。

GE株の上昇

ボーイングとレイセオンの株価下落は思ったより下げ幅が少なかったものの予想通り下落したのだが、ゼネラル・エレクトリック株はそれに加えて市場が低調だったにもかかわらず大きな上昇となったのが驚きだった。

最初GE株が上昇したのを見た時は

  • 今回のボーイング777-200型機のトラブルの原因はレイセオンのプラット&ホイットニーのPW4000に起因するものらしい
  • 従ってGEのエンジンが販売を増やす可能性が高まった

のが上昇の理由かと思ったのだが、調べてみるとどうも違ったようだ。以下にGE株の上昇の原因について記しておく。

ゴールドマン・サックスが2月22日GEの目標株価を引き上げ

投資格付け:Buyを維持

目標株価:14ドルから15ドルへ引き上げ

【ゴールドマン・サックスのアナリストJoe Ritchie氏の見解要旨】

前提として2月19日(金)にゴールドマン・サックスはGEのインベスター・リレーションズチームとのバーチャル会議を実施している。

  • “Overall, we came away encouraged by the free-cash-flow momentum/power trajectory”
    「全体として、私たちはフリーキャッシュフローの勢い/力の軌道に勇気づけられて去りました」
  • “The meeting reinforced our view that many of the tail risks (e.g., long-term care, pension balance sheet, etc.) that have plagued GE’s stock in the past are ring-fenced in the medium term.”
    「この会議は、過去にGEの株式を悩ませてきたテールリスク(例:長期介護、年金のバランスシートなど)の多くが中期的には囲い込まれているという私たちの見解を強化しました」
  • “the carryover benefits from 2020 cash restructuring actions and working capital improvements should yield significantly better FCF than last year”
    「2020年の現金再編措置と運転資本の改善による繰越利益は、昨年よりも大幅に優れたFCFを生み出すはずです」
  • “What underpins our confidence in 2021 FCF is the fact that the low end of the guide assumes no improvement in aviation from current levels.”
    「2021年のFCFに対する私たちの信頼を支えているのは、(GEのFCF)見通しの下限予測が現在のレベルからの航空の改善を想定していないという事実です」

週末のボーイング777のエンジントラブルは含まれていないが、ここ数年懸念になっているGEのキャッシュフローについての考察が目標株価引き上げの要因となっている。

GEの2021年キャッシュフロー見込は2021年1月の決算時には25億ドル~45億ドルだったが、ゴールドマン・サックスによるとその下限ではなく上限に近い方になりそうだ。


まとめ

繰り返しになるが自分が想定していたよりもボーイング(BA)、ゼネラル・エレクトリック(GE)株が下がらなくて何よりだった。GEに至っては目標株価の上方修正というタイミングと重なって予想外の大幅上昇となった。

事故発生から日にちが経っていないので今後どういう方向に株価が向かうかはまだ予断を許さないが、とりあえずは一安心といったところだろうか。

最後になるが週末の時点では、明示はしなかったが正直昨日のボーイング株は5%ぐらい下がり、それにつれてGE株もそれなりに下がるだろうと思っていたのだが、実際は上記の通り。

やはり自分は短期の株価上下についてのセンスがないものだ、と再確認しました。

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