はじめに
現地時間2024年10月18日(金)には自分の保有しているプロクター・アンド・ギャンブル(PG)の2025年第1四半期決算発表があった。
PGの四半期決算は7~9月と他の多くの米企業と同じだが、PGは期の違いにより2025年第1四半期(他の多くは2024年第3四半期)となっている点には注意。
前回の決算では冴えない決算内容、消費者へのインフレ圧力の強さから5%近い下落となり
「今後のP&G株だが、ここ数四半期の懸念である中国、中東の状況が改善するにはまだ時間がかかりそうであり、あまり期待は出来ないだろう。今回の決算を受けて下落傾向に転じてしまうのか、一時的な落ち込みに留まり堅調な株価推移を維持できるのかに注目しておきたい。」
と書いていたのだが今回の決算結果及び株価はどうだったろうか。以下決算内容について確認・整理しておく。
P&G2025年第1四半期決算概要
以下は、プロクター・アンド・ギャンブルの企業サイトより引用・抜粋。
- 2025年第1四半期の総売上高(Net Sales)は217億3700万ドル、前年同期は218億7100万ドルで前年同期比1%の減少
- 2025年第1四半期のNon-GAAPベースの中核事業一株当たり利益(Non-GAAP Core EPS)は1.93ドル、前年同期は1.83ドルで前年同期比5%の増加
2025年第1四半期の主な結果は以下の通り。
いずれもプラスとなっており、前回決算で11%から2%へと急減したCore EPS Growth(中核事業EPS成長率)が5%と持ち直している。
2025年通期見通し
FY2025の見通しは以下の通り。
【売上(Sales)】
- Organic Sales Growth(既存事業売上成長率):+3%~+5%(前回と変わらず)
- Net Sales Growth(総売上成長率):+2%~+4%(1%の不利な為替影響を含む)(前回と変わらず)
【一株当たり利益(EPS)】
- Core EPS Growth(中核事業EPS成長率):+5%~+7%(前回と変わらず)
- All-in EPS Growth(全EPS成長率):+10%~+12%(前回と変わらず)
【現金(Cash)関連】
- Adjusted Free Cash Flow Productivity(調整後FCF生産性):90%(前回と変わらず)
- Capital Spending, % Sales(設備投資、売上に対する割合):4~5%(前回と変わらず)
- Dividends(配当):~100億ドル(前回と変わらず)
- Direct Share Repurchase(直接自社株買い戻し):60億ドル~70億ドル(前回と変わらず)
その他
その他決算発表資料とアナリストとのカンファレンスコールで気になった点は以下の通り。
- 2025年第1四半期に19億ドルの自社株買いを実施
- 2025年第1四半期にP&Gの商品全体の価格は1%上昇(前四半期も1%上昇)
- 引き続き厳しい経済環境と地政学的環境の中で、会計年度のガイダンスにも沿った良好な業績を上げている
- 10製品カテゴリーのうち 8つで、四半期の既存事業売上高が増加または維持された
- ベビーケア、スキン&パーソナルケアは1桁台半ばの減少
- 事業の約85%で売上高が堅調に伸び、会計年度の計画どおりに進んでいる
- 北米では引き続き販売量と価値のシェアが伸び、ヨーロッパの重点市場ではシェアの傾向が改善している
- 中国の既存事業売上高は15%減少。2025年第1四半期中に市場環境はさらに悪化し、SK-IIはブランド特有の逆風に直面し続けている。中国が成長に戻るまでにはおそらくさらに数四半期かかるだろう
- 11月21日に予定されているInvestor Dayで、当社の統合戦略とそれが競争上の優位性と結果をどのように推進しているかについて詳しく説明する
- 質疑応答
- 中国・中東の課題と米国・ヨーロッパの重点市場の減速懸念について
- 中東と中国の減速のレベルはまだ不安定だと思うが、ガイダンスの範囲内
- ポートフォリオの残りの部分、つまり米国、カナダ、ヨーロッパの重点市場、ヨーロッパのエンタープライズ市場、ラテンアメリカ、これらの地域が当社の売上ベースの85%を占めている
- これら地域を合計すると数量シェアを拡大または維持している
- 他企業の決算ではマクロ環境の悪化傾向を指摘している多国籍企業がいくつかあるが、P&Gの(上記)説明はそれらと矛盾しているように思われる点について
- 我々の製品は消費者にとって性能が非常に重要なカテゴリー
- 消費者は、期待通りの性能を約束する製品に支払うプレミアムよりも、故障のコストの方が高いことを理解しており、その論理が消費者がP&Gに乗り換え、さらに上位の製品に乗り換え続けることにつながっていると思う
- 中国と中東は最も予測しにくい分野であるからこそ、現時点でガイダンスの範囲に変動性を持たせている。改善の可能性を高める最善の方法は、ファンダメンタルズに注力することであり、私たちはそれを実行し続けている
- 売り上げベースの85%は明らかに米国がその大部分を占めており、米国での市場シェアの勢いについてはかなり自信があるようだが、もう少し詳しく説明して欲しい
- 米国には依然として大きなチャンスがあると見ている
- 当社が事業を展開しているカテゴリーでは、現時点では3%~4%の範囲で持続的に成長している
- 価格要素が下がるにつれて、予想どおり前年の5%~6%の範囲からは減速しているが、数量面では実際に力強く成長している
- 他の消費者グループにサービスを提供しているのと同じレベルでまだサービスを提供していない消費者に目を向けると、約50億ドルの成長機会があると考えている
- 粗利益と売上原価のインフレについて
- 実際の商品インフレが損益に反映されるまでには通常6~9ヶ月の遅延が生じるので、恐らく会計年度の後半に向けて反映されていくだろう
- 中国事業の改善ペースについて
- 中国の回復ペースを予測するのは無駄な作業だと思う。だからこそ、通年ガイダンスとして範囲を設けている
- 年間を通じて減速が続けばガイダンスの範囲の下限に近づき、改善が見込まれればガイダンスの上限に近づく
- 指摘したいのは第1四半期と第2四半期を通じて逆風が依然として続いているという全体的な影響
- 中国・中東の課題と米国・ヨーロッパの重点市場の減速懸念について
市場予測との比較
今回の主な決算内容と市場予想とを比べてみると、
- 2025年第1四半期の総売上高(Net Sales)は217億3700万ドル、市場予想の219億1000万ドルを下回っている
- 2025年第1四半期のNon-GAAPベースの中核事業一株当たり利益(Non-GAAP Core EPS)は1.93ドル、市場予想の1.90ドルを上回っている
となっている。
まとめ
上記の様な決算結果を受けてP&Gの株価は
前日とほぼ変わらず。同日の米国市場は
ネットフリックス(NFLX)の決算を受けての11.09%上昇が影響してか、主要3市場はいずれも上昇。ただしその上昇幅は限定的で、ハイテク銘柄の比重が少ないダウ工業平均は前日比下落して始まっていた。日中のPG株の動きを見てみると
開場直後は前日比2%下落の局面もあったので、不安要素はあるものの年間見通しを維持したことが結果的には評価されたのだろうか。
年初来のP&G株の推移を市場(S&P 500)と比べてみると
前回7月末の四半期決算を受けて大きく下落した後は8月頭、9月頭の市場大幅下落の局面でも市場とは逆に堅調な株価推移となり9月中旬までそれが続いていた。しかし9月下旬からは市場が上昇しているのに対して見劣りがする。それでも年初来では悪くない株価推移となっていると言えるだろう。
今後のP&G株だが、決算当日の株価は悪くなかったものの、中国事業の不調が数四半期続くこと(これは以前と変わっていない)や経営陣がカンファレンスコールで説明した様に消費者が行動するか(P&Gの商品にプレミアム価値を認め続けるか)などの不安要素は残っている。個人的には市場と同程度の推移をしてくれることを望みたいが、どうなるだろうか。