はじめに
現地時間6月23日(木)の米国市場閉場後に、気になっていた掲題の2022年米銀ストレステスト結果が公表された。
以下結果を簡単に整理しておくと共に、それを受けての自分の所有米銀株であるシティグループ(C)、JPモルガン・チェース(JPM)の株価を確認しておく。
2022年6月23日のFRBの米銀ストレステスト結果まとめ
以下はFRBのサイトの発表文、ストレステスト結果資料より引用・抜粋。
- テストされたすべての銀行は最も厳しい経済シナリオの下で6120億ドルの損失が予測さるが規定されている最低自己資本比率4.5%を上回り、平均では9.7%と最低要件の2倍以上
- 今年のストレステストは2021年よりも厳しいものであり、商業用不動産価格の大幅な下落などで国内総生産(GDP)が3.5%減少し、失業率が10%に悪化するといった状況を想定
このストレステスト結果により、各行が損失に対するストレス資本バッファー(stress capital buffer)をどの程度保有する必要があるかや株主に還元できる額が決まる。ストレス資本バッファーの要件が開示されるのは6月27日(月)の米国市場閉場後の16:30予定
以下自分の所有米銀株とその比較でよく使うシティ、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ(BAC)、ウェルズ・ファーゴ(WFC)の自己資本比率結果は以下の通り。
米銀ストレステストを受けての主要米銀の株価
先に挙げたバンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JPモルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴのストレステスト結果後の株価は以下の通り。
いずれも前日比プラスではあるが市場自体が
大きく上昇しているので銀行株が特に良かったわけではない。
主要4行で株価の上昇にバラツキがあるのを調べてみたところ、最初は
- 先に挙げた自己資本比率結果との関連性は薄い
- ウェルズ・ファーゴに同日アナリストのアップデートがあったが目標株価が引き下げられている
といった具合にしっくりこなかったのだが、どうも先に挙げたストレステストの結果に基づき各行が積み上げるストレス資本バッファー(stress capital buffer)の差異が影響したらしい。
Morgan StanleyのアナリストBetsy Graseck氏
- バンク・オブ・アメリカ、シティ、JPMモルガンはストレス資本バッファーを昨年より引き上げる必要があると予想されるため、配当を据え置きとし買い戻しをなくす必要があるかもしれず、その結果以下の様な影響が出る可能性がある
- バンク・オブ・アメリカ:EPSが1~2%低下。目標株価を49ドルから47ドルに引き下げ
- シティグループ:EPSが1~5%低下。目標株価を60ドルから57ドルに引き下げ
- JPモルガン:EPSが1~2%低下。目標株価を152ドルから149ドルに引き下げ
Keefe, Bruyette & Woods(KBW)のアナリストDavid Konrad氏
- バンク・オブ・アメリカ、シティ、JPMモルガンはストレス資本バッファーを昨年より引き上げる必要があると予想されるため、自社株買い戻しは大幅に下方修正される必要がある。買い戻しの調整によりEPSに以下の様な影響が出る可能性がある
- バンク・オブ・アメリカ:EPSが約5%低下
- シティグループ:EPSが約2%低下
- JPモルガン:EPSが約2%低下
- ウェルズ・ファーゴはストレス資本バッファーが昨年とほとんど変わらないと予想される
といった具合にウェルズ・ファーゴを除くバンク・オブ・アメリカ、シティ、JPMモルガンはストレス資本バッファーを昨年より引き上げる必要があると予想され、それに付随してEPSや配当、自社株買い戻しに悪影響が出る可能性が各行の株価に影響したらしい。
まとめ
2022年の米銀ストレステストの結果とそれを受けての株価についてまとめてみた。
最も厳しいシナリオの下でも自分の所有株であるシティ、JPモルガンは規定された自己資本比率の要件を満たすという点では良かったが、ストレス資本バッファーを昨年に比べて積み増す可能性が高い点が気に掛かる。株価自体は市場と同程度の上昇となったが、市場の上昇に引っ張られた可能性もあるので安心はできない。とはいえ、ストレステストの結果がもっと悪く株価が下落するような事態にならなかった事をひとまずは良しと捉えるべきなのだろう。
次は実際のストレス資本バッファーがどうなるか、その結果自社株買い戻しや配当がどうなるかに注目だが、上述のアナリストの見込が正しいのであれば残念ながら期待しない方が良さそうだ。シティは丸三年(12四半期)配当据え置き中であるので何とか配当増を期待したかったのだが・・・。