はじめに
2025年6月11日(水)発表の米消費者物価指数のまとめをした際に、米国株式市場が後半下落傾向となった理由の一つとして
「後半は在イラク米大使館が地域的な安全保障上のリスクが高まっているとして避難命令を出す準備を進めていると報道されたことや、イラクのナシルザデ国防軍需相が、米国との核協議が予定される中、交渉が頓挫し米国との間に紛争が生じた場合、イランは地域の米軍基地を攻撃すると述べるなどの地政学的リスクの影響を受けて下落」
と書いていたのだが、現地時間2025年6月13日(金)に掲題の様にイスラエル軍がイランの核関連施設に対して空爆を行った。
そこに至るまでの経緯については整理している最中であり別途まとめることにするが、ひとまずイスラエルのイラン攻撃を受けて同日の米国市場がどう反応したかについて簡単にまとめておくことにする。
2025年6月13日のイスラエル軍によるイラン核関連施設に対する空爆を受けての市場の動き
米国株式市場
イスラエルによるイラン核関連施設空爆を受けて下落して始まる。その後下落幅はやや縮小傾向となったが、イランがイスラエルに対して報復攻撃を行ったことが伝わると再び下落傾向に転じ、主要3指数ともに1%を超える下落で取引を終え、S&Pの主要11業種ではエネルギーを除いた10業種が下落となっている。
米国10年債
イスラエルによるイラン核関連施設空爆から、中東情勢の緊迫化により原油価格が急騰し、米国でのインフレ懸念が高まったことから利回りが上昇(債権売り)となったのだろう。
ドル円為替
上記チャートの6月13日1:00頃にイスラエルによるイラン空爆が報じられると、1ドル=143円台半ばから一時143円を割る水準までドル安。しかしその後は安全資産と見なされるドルへの買いが進み1ドル=144円台前後で取引を終えている。
ニューヨーク原油先物価格
過去数日間は1バレル=65ドル~68ドル程度で推移していたニューヨーク原油先物価格は、イスラエルのイラク空爆を受けて、世界の原油生産の約3分の1を担う(イランの産油量は世界全体で4位)中東地域で戦争が拡大するとの懸念から一時1バレル=77ドル台まで急騰。その後やや値を下げたものの1バレル=73ドル台で取引を終えている。
まとめ
以上、2025年6月13日のイスラエル軍によるイラン核関連施設に対する空爆後の米国市場について簡単にまとめてみた。
自分が懸念していたよりも米国株式市場、債券、ドル円為替の変動幅は大きくなかったが、ニューヨーク原油先物価格は7%を超える上昇となっており、紛争が長期化すれば原油供給量そのものに加え、ホルムズ海峡を通じた原油供給の制限により、更なる原油価格の上昇、そしてそれに伴う製造関連エネルギーコストの上昇がインフレ圧力となる可能性があるだろう。
また個人的にはトランプ政権になってから、円を含めて世界全体で低下していたドルがやや上昇となったのは意外。トランプ政権の政策により地位が低下していたドルだが、やはりこういった地政学的リスクが顕在化した場合には、未だ安全資産と見なされているのだろうか。
ただでさえトランプ政権の動きにより不透明な状況の中に、大きな変動要素が顕在化してしまった訳だが、何とか早期に事態が鎮静化することを願いたい。