はじめに
2026年3月9日(月)の米国株式市場は、週間で下落となった前週に続き米/イスラエルのイラン大規模攻撃の長期化、中東エネルギー資源への懸念から前週末から1%を超える下落で始まっており、どこまで下がるのだろうかと思いながら就寝したのだが、今朝起きてみると

と主要3米国株式指数は予想とは異なり、いずれも上昇に転じて取引を終えていた。
明確に上昇に転じたのは米東部夏時間の15:30前ぐらいからであり、確認してみると掲題のトランプ大統領の発言がその要因だったようだ。
以下、2026年3月9日のトランプ大統領の発言を中心に市場の動きについて確認しておく。
米現地時間2026年3月9日(月)のトランプ大統領の主な発言
以下は米東部夏時間(3月8日~11月1日まで米国はサマータイム期間)。
- 3月9日15:16、米CBSニュースのWeijia Jiang氏がSNSに以下の投稿
- トランプ大統領は電話インタビューで、戦争は間もなく終結する可能性があると述べた
- 「戦争はほぼ完全に終わったと思う。彼らは海軍も通信部隊も空軍もない」(I think the war is very complete, pretty much. They have no navy, no communications, they’ve got no Air Force)
- さらに、米国は当初の4~5週間という予測期間を「はるかに(very far)」上回っていると付け加えた
- 3月9日17:30頃、トランプ大統領のフロリダ州での会見
- イランに対する軍事作戦は成功と宣言することができるが、更に踏み込むつもりだ
- (イランがハメネイ師の後継者としてモジタバ師を最高指導者に選出したことについて)失望している。この国にとって、同じ問題がさらに続くだけだと考えている
- 十分な供給を確保するため、特定の石油関連制裁を免除する。一部の国に制裁を科しているが、(ホルムズ)海峡の状況が改善するまで、そうした制裁を解除するつもりだ
- ウクライナと中東の紛争についてロシアのプーチン大統領と「非常に良い電話会談」を行った
- プーチン大統領と(ウクライナの)ゼレンスキー大統領の間には非常に強い憎悪がある。両者は全く折り合えないようだが、この問題に関しては前向きな協議だったと思う
- プーチン氏はイラン紛争について協力したいと考えているが、「ウクライナとロシアの戦争を終わらせた方が助けになる」と私は言った。その方が役に立つ
- 3月9日20時半、トランプ大統領がSNSに以下の投稿*
- もしイランがホルムズ海峡内の原油の流れを阻止するようなことがあれば、アメリカ合衆国はこれまで受けてきた攻撃の20倍もの打撃を与えるだろう。さらに、我々は容易に破壊できる標的を排除し、イランが国家として再び再建することを事実上不可能にする。死と炎と怒りがイランを支配するだろう。しかし、私はそうならないことを祈る!
*このトランプ大統領の投稿前(フロリダでの会見後)に、イラン国営メディアが革命防衛隊の報道官の声明として、米国とイスラエルの攻撃が続けば、湾岸地域から「1リットルの石油」も輸出させないと表明したと報じている。
同日の市場の動き
米国株式市場
冒頭に挙げた様に米主要3株式指数はいずれも下落して取引を開始したものの、結局前日比プラスで取引を終えている。
S&P 500の日中の動きを詳しく見てみると

取引開始後には前日比1.5%程度まで下落したものの、その後はやや持ち直して前日比横ばいから0.5%下落の範囲での推移が続いていた。そして15時半前にCBSニュース記者のSNS投稿をキッカケに大きく上昇となり、0.83%の上昇で取引を終えている。
米国10年債

上記チャートのCDT(米国中部夏時間)は米EDT(米国東部夏時間)より1時間遅れている。
取引開始と同時に利回りは上昇。その後は方向感が定まらない動きとなったが、10時(EDTでは11時)ごろから利回りは低下傾向。これはニューヨーク・ポスト紙が独占(Exclusive)としてトランプ大統領が、原油価格高騰については「あらゆることに対して計画がある」とし、イラン紛争は「完全に完了している」と主張(“I have a plan for everything” regarding price surges and asserting the Iran conflict is “very complete”)との報道がなされるという情報が事前に出回ったためと思われる(実際の報道は12時前になされた)。
株式市場は反応薄だったのに債券市場が敏感に反応したのは、原油高によるインフレ懸念、そしてそれを抑えるための利上げが債券市場ではより強く意識されていたためだろう。
ちなみにCBSニュースの記者の投稿は債券市場の取引終了後のことであり、上記チャートへの影響は無い。
ドル円為替

週明けの取引は先週の1ドル=157円台後半から158円半ばへとドル高で開始し、その後158.9円台までドル高が進行。しかしその後はややドル安傾向となり1ドル=158.5円を下回る水準での取引となっていた。そして株式市場と同様にCBSニュース記者の投稿がキッカケとなって急激にドル安となり1ドル=158円台を割り込み、その後は方向感が定まらないながらも1ドル=157円台での推移となっている。
1ドル=158.9円近辺のドル高からややドル安となったのは、G7各国が石油備蓄の「即時放出(3億〜4億バレル規模)」に向けた最終調整に入ったという速報がフィナンシャル・タイムズなどで報道された影響と思われる(現時点ではまだなされていない)。
ニューヨーク原油先物価格

週明けの取引は先週の1バレル=91~92ドル程度から一気に跳ね上がって110ドル前後で取引を開始。その後しばらくして1バレル=115ドルを超える推移となったが、上記チャート1時頃に急速に下落傾向となった。これはドル円為替が158.9円からドル安に転じたのと同じタイミングで、G7各国が石油備蓄の「即時放出」に向けた最終調整に入ったという速報が影響したのだろう。そしてCBSニュース記者の投稿で一段安となり1バレル=80ドル台になったが、その後はイラン革命防衛隊の発言やトランプ大統領のSNS投稿などもあって1バレル=85ドル~90ドルの範囲で方向感に欠ける動きとなっている。
まとめ
以上2026年3月9日のトランプ大統領の発言と市場の動きについて整理してみた。
米国株式市場が前営業日マイナスからプラスに転じて取引を終えたこと、ドル円為替とニューヨーク原油先物価格がが一段とドル安/原油安になったことは、掲題に挙げたトランプ大統領のCBSニュース記者への発言が契機となったことがよく判る。またそれ以前のドル高値、原油高値からの下落はG7が石油備蓄の即時共同放出を検討しているとの報道が寄与していたようだ。
ただこれで安心できるかというと必ずしもそういう訳ではない。G7の共同放出の詳細(時期・規模)が実際にどうなるかは未だ不明であるし、トランプ大統領の「戦争はほぼ終わった」という発言も、米国株式市場閉場後の会見における「更に踏み込むつもりだ」といった発言や、その後のSNS投稿を考えると、ホルムズ海峡における革命防衛隊の動きも含めてどこまで信頼性がおけるか判らない。また米国とイランの動きに目が行きがちだが、イスラエルの動きにも気を付ける必要がある。
まだまだ安堵せずに、事態がどうなるのかについて引き続き注意を払っていく姿勢は変えないでおくべきだろう。